text:yomeiuji:uji038
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text:yomeiuji:uji038 [2014/09/28 01:47] – Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji038 [2017/12/04 14:10] – Satoshi Nakagawa | ||
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**絵仏師良秀、家の焼くるを見て悦ぶ事** | **絵仏師良秀、家の焼くるを見て悦ぶ事** | ||
- | 是も今はむかし、絵仏師良秀と云ありける。家の隣より火出きて風をしおほひてせめければ、逃出て大路へ出にけり。 | + | これも今は昔、絵仏師良秀といふありける。家の隣より、火出で来て、風おし覆ひて責めければ、逃げ出でて、大路へ出でにけり。人の書かする仏もおはしけり。また、衣着ぬ妻子なども、さながら内に有けり。それも知らず、ただ逃げ出でたるをことにして、向ひのつらに立てり。 |
- | 人のかかする仏もおはしけり。又、衣きぬ妻子なども、さながら内に有りけり。それもしらず、ただ逃いでたるをことにて、むかひのつらにたてり。 | + | 見れば、すでにわが家に移りて、煙、炎くゆりけるまで、おほかた、向ひのつらに立ちて、眺めければ、「あさましきこと」とて、人ども、来とぶらひけれど騒がず。「いかに」と、人言ひければ、向ひに立ちて、家の焼くるを見て、うちうなづて、時々笑ひけり。「あはれ、しつるせうとくかな。年ごろは悪(わろ)く書きたるものかな」と言ふ時に、とぶらひに来たる者ども、「こはいかに、かくては立ち給へるぞ。あさましきことかな。物の憑き給へるか」と言ひければ、「なんでふ、物の憑くべきぞ。年ごろ、不動尊の火焔を悪しく書けるなり。今見れば、『かうこそ燃えけれ』と、心得つるなり。これこそ、せうとくよ。この道を立てて、世にあらんには、仏だによく書き奉らば、百千の家も出で来なん。わたうたちこそ、させる能もおはせねば、物をも惜しみ給へ」と言ひて、あざ笑ひてこそ立てりけれ。 |
- | みれば、すでに我家にうつりて、煙ほのをくゆりけるまで、おおかたむかひのつらに立てながめければ、「あさましきこと」とて、人どもきとぶらひけれどさはがず。「いかに」と人いひければ、むかひにたちて、家のやくるをみて、うちうなづて、時々わらひけり。「あはれ、しつるせうとくかな。年比はわろくかきたる物かな」と云。 | + | その後にや、「良秀がよぢり不動」とて、今に人々めであへり。 |
- | 時に、とぶらひにきたる者共、「こはいかにかくては立給へる。あさましき事かな。物のつき給つるか」といひければ、「なんでう物のつくべきぞ。年比、不動尊の火焔をあしく書ける也。今みれば、かうこそもえけれと、心えつるなり。これこそ、せうとくよ。この道をたてて、世にあらんには、仏だによく書たてまつらば、百千の家も出来なん。わたうたちこそ、させるのうもおはせねば、物をもおしみ給へ」と云ひて、あざ笑ひてこそ立りけれ。 | + | ===== 翻刻 ===== |
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+ | 是も今はむかし絵仏師良秀と云ありける家の隣より火出きて | ||
+ | 風をしおほひてせめけれは逃出て大路へ出にけり人のかかする仏もおはし | ||
+ | けり又衣きぬ妻子なともさなから内に有けりそれもしらすたた逃いて/46オy95 | ||
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+ | たるをことにしてむかひのつらにたてりみれはすてに我家にうつりて煙ほのを | ||
+ | くゆりけるまて大かたむかひのつらに立てなかめけれはあさましきこと | ||
+ | とて人ともきとふらひけれとさはかすいかにと人いひけれはむかひに | ||
+ | たちて家のやくるをみてうちうなつて時々わらひけりあはれしつる | ||
+ | せうとくかな年比はわろくかきたる物かなと云時にとふらひにきたる者 | ||
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- | 其後にや、良秀がよぢり不動とて、今に人々めであへり。 |
text/yomeiuji/uji038.txt · 最終更新: 2017/12/21 00:05 by Satoshi Nakagawa