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text:yomeiuji:uji037 [2017/12/04 13:55]
Satoshi Nakagawa [第37話(巻3・第5話) 鳥羽僧正、国俊と戯の事]
text:yomeiuji:uji037 [2017/12/21 00:05] (現在)
Satoshi Nakagawa [第37話(巻3・第5話) 鳥羽僧正、国俊と戯れの事]
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 **鳥羽僧正、国俊と戯れの事** **鳥羽僧正、国俊と戯れの事**
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 +===== 校訂本文 =====
  
 これも今は昔、法輪院大僧正覚猷といふ人おはしけり。その甥に、陸奥前司国俊((源国俊))、僧正のもとへ行きて、「参りてこそ候へ」と言はせければ、「ただ今見参すべし。そなたにしばしおはせ」とありければ、待ち居たるに、二時(ふたとき)ばかりまで出で会はねば、なま腹立たしう思えて、「出でなん」と思ひて、共に具したる雑色を呼びければ、出で来たるに、「沓持(も)て来(こ)」と言ひければ、持て来たるを履きて、「出でなん」と言ふを、この雑色が言ふやう、「僧正の御房の『陸奥殿に申したれば、『とう乗れ』と、あるぞ。その車、率て来(こ)』とて、『小御門より出でん』と仰せごと候ひつれば、『やうぞ候ふらん』とて、牛飼の者、奉りて候へば、『待たせ給へと申せ。時のほどぞあらんずる。やがて帰り来んずるぞ』とて、はやう奉りて、出でさせ給ひ候ひつるにて候。かうて、一時には過候ひぬらん」と言へば、「わ雑色は不覚のやつかな。『御車をかく召しのさぶらふは』と、われに言ひてこそ、貸し申さめ。不覚なり」と言へば、「うちさしのきたる人にもおはしまさず。やがて、御尻切たてまつりて、『きときと、よく申したるぞ』と仰せごと候へば、力及び候はざりつる」と言ひければ、陸奥の前司、帰り上りて、「いかにせん」と思ひまはすに、僧正は定まりたることにて、湯に藁をこまごまと切りて、一はた入れて、それが上に莚(むしろ)を敷きて、歩(あり)き回りては、さうなく湯殿へ行きて、裸になりて「えさい、かさい、とりふすま」と言ひて、湯船にさくとのけざまに臥すことをぞし給ひける。 これも今は昔、法輪院大僧正覚猷といふ人おはしけり。その甥に、陸奥前司国俊((源国俊))、僧正のもとへ行きて、「参りてこそ候へ」と言はせければ、「ただ今見参すべし。そなたにしばしおはせ」とありければ、待ち居たるに、二時(ふたとき)ばかりまで出で会はねば、なま腹立たしう思えて、「出でなん」と思ひて、共に具したる雑色を呼びければ、出で来たるに、「沓持(も)て来(こ)」と言ひければ、持て来たるを履きて、「出でなん」と言ふを、この雑色が言ふやう、「僧正の御房の『陸奥殿に申したれば、『とう乗れ』と、あるぞ。その車、率て来(こ)』とて、『小御門より出でん』と仰せごと候ひつれば、『やうぞ候ふらん』とて、牛飼の者、奉りて候へば、『待たせ給へと申せ。時のほどぞあらんずる。やがて帰り来んずるぞ』とて、はやう奉りて、出でさせ給ひ候ひつるにて候。かうて、一時には過候ひぬらん」と言へば、「わ雑色は不覚のやつかな。『御車をかく召しのさぶらふは』と、われに言ひてこそ、貸し申さめ。不覚なり」と言へば、「うちさしのきたる人にもおはしまさず。やがて、御尻切たてまつりて、『きときと、よく申したるぞ』と仰せごと候へば、力及び候はざりつる」と言ひければ、陸奥の前司、帰り上りて、「いかにせん」と思ひまはすに、僧正は定まりたることにて、湯に藁をこまごまと切りて、一はた入れて、それが上に莚(むしろ)を敷きて、歩(あり)き回りては、さうなく湯殿へ行きて、裸になりて「えさい、かさい、とりふすま」と言ひて、湯船にさくとのけざまに臥すことをぞし給ひける。


text/yomeiuji/uji037.txt · 最終更新: 2017/12/21 00:05 by Satoshi Nakagawa