text:yomeiuji:uji035
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text:yomeiuji:uji035 [2014/09/28 01:46] – Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji035 [2017/12/02 12:42] – Satoshi Nakagawa | ||
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**小式部内侍、定頼卿の経にめでたる事** | **小式部内侍、定頼卿の経にめでたる事** | ||
- | いまはむかし、小式部内侍に定頼中納言物いひわたりけり。それに又、時の関白かよひ給けり。局に入てふし給たりけるを、しらざりけるにや、中納言よりきて、たたきけるを、局の人「かく」とやいひたりけん、沓をはきて行きけるが、すこしあゆみのきて、経をはたとうちあげてよみたりけり。 | + | 今は昔、小式部内侍に、定頼中納言((藤原定頼))、もの言ひわたりけり。それにまた、時の関白((藤原教通))通ひ給ひけり。 |
- | 二声ばかりまでは、小式部内侍、きと耳をたつるやうにしければ、此入てふし給へる人、「あやし」とおぼしける程に、すこし声とをうなるやうにて、四声五こゑばかり、ゆきもやらでよみたりける時、「う」といひてうしろ様にこそ、ふしかへりたりけれ。 | + | 局に入りて、臥し給ひたりけるを知らざりけるにや、中納言、寄り来て、叩きけるを、局の人、「かく」とや言ひたりけん、沓を履きて行きけるが、すこし歩み退(の)きて、経をはたとうちあげて読みたりけり。 |
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+ | 二声ばかりまでは、小式部内侍、きと耳を立つるやうにしければ、この入りて臥し給へる人、「あやし」と思しけるほどに、少し声遠(とほ)うなるやうにて、四声・五声ばかり、行きもやらで読みたりける時、「う」と言ひて後ろざまにこそ、臥し返りたりけれ。 | ||
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+ | この入り臥し給へる人の、「さばかり、耐へがたう、恥かしかりしことこそ、なかりしか」と、後にのたまひけるとかや。 | ||
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+ | ===== 翻刻 ===== | ||
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+ | いまはむかし小式部内侍に定頼中納言物いひわたりけりそれに又時の | ||
+ | 関白かよひ給けり局に入てふし給たりけるをしらさりけるにや | ||
+ | 中納言よりきてたたきけるを局の人かくとやいひたりけん沓を | ||
+ | はきて行けるかすこしあゆみのきて経をはたとうちあけてよみ | ||
+ | たりけり二声はかりまては小式部内侍きと耳をたつるやう | ||
+ | にしけれは此入てふし給へる人あやしとおほしける程にすこし声 | ||
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+ | 給へる人のさはかりたへかたうはつかしかりし事こそなかりしかと後に | ||
+ | の給ひけるとかや/44オy91 | ||
- | この入ふし給へる人の「さばかり、たへがたう、はづかしかりし事こそ、なかりしか」と、後にの給ひけるとかや。 |
text/yomeiuji/uji035.txt · 最終更新: 2017/12/21 00:04 by Satoshi Nakagawa