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text:yomeiuji:uji032 [2017/11/30 22:11] – [第32話(巻2・第14話)柿の木に仏現ずる事] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji032 [2017/12/21 00:02] (現在) – [第32話(巻2・第14話)柿の木に仏現ずる事] Satoshi Nakagawa
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 **柿の木に仏現ずる事** **柿の木に仏現ずる事**
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 +===== 校訂本文 =====
  
 昔、延喜の御門((醍醐天皇))の御時、五条の天神のあたりに、大きなる柿の木の、実ならぬあり。その木の上に、仏現はれておはします。京中の人、こぞりて参りけり。馬・車も立てあへず、人もせきあへず、拝みののしる。 昔、延喜の御門((醍醐天皇))の御時、五条の天神のあたりに、大きなる柿の木の、実ならぬあり。その木の上に、仏現はれておはします。京中の人、こぞりて参りけり。馬・車も立てあへず、人もせきあへず、拝みののしる。
  
-かくするほどに、五・六日あるに、右大臣殿(([[:text:k_konjaku:k_konjaku20-3|『今昔物語集』20-3]]では源光とする。))、心得ず思し給ひけるあひだ、「まことの仏の、世の末に出で給ふべきにあらず。われ行きて、心みん」と思して、日の装束うるはしくして、檳榔(びりやう)の車に乗りて、御後前、多く具して、集まり集ひたる者ども退(の)けさせて、車かけはづして、搨(しぢ)を立てて、木末を目もたたかず、あから目もせずして守りて、一時ばかりおはするに、この仏、しばしこそ花も降らせ、光をも放ち給ひけれ、あまりにあまりに守られて、しわびて、大なる糞(くそとび)の羽折れたる、土に落ちてまどひふためくを、童ども、寄りて打ち殺してけり。大臣(おとど)は、「さればこそ」とて帰り給ひぬ。+かくするほどに、五・六日あるに、右大臣殿(([[:text:k_konjaku:k_konjaku20-3|『今昔物語集』20-3]]では源光とする。))、心得ず思し給ひけるあひだ、「まことの仏の、世の末に出で給ふべきにあらず。われ行きて、心みん」と思して、日の装束うるはしくして、檳榔(びりやう)の車に乗りて、御後前、多く具して、集まり集ひたる者ども退(の)けさせて、車かけはづして、搨(しぢ)を立てて、木末を目もたたかず、あから目もせずして守りて、一時ばかりおはするに、この仏、しばしこそ花も降らせ、光をも放ち給ひけれ、あまりにあまりに守られて、しわびて、大なる糞(くそとび)の羽折れたる、土に落ちてまどひふためくを、童ども、寄りて打ち殺してけり。大臣(おとど)は、「さればこそ」とて帰り給ひぬ。
  
 さて、時の人、この大臣を、「いみじく、かしこき人にておはします」とぞ、ののしりける。 さて、時の人、この大臣を、「いみじく、かしこき人にておはします」とぞ、ののしりける。
text/yomeiuji/uji032.txt · 最終更新: 2017/12/21 00:02 by Satoshi Nakagawa