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text:yomeiuji:uji026 [2017/11/18 17:34] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji026 [2017/12/20 23:59] (現在) – [第26話(巻2・第8話)晴明、蔵人少将を封ずる事] Satoshi Nakagawa
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 **晴明、蔵人少将を封ずる事** **晴明、蔵人少将を封ずる事**
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 +===== 校訂本文 =====
  
 昔、晴明((安倍晴明))、陣に参りたりけるに、前(さき)はなやかに追はせて、殿上人の参りけるを見れば、蔵人の少将とて、まだ若くはなやかなる人の、見目(みめ)まことに清げにて、車より下りて、内に参りたりけるほどに、この少将の上に烏の飛びて通りけるが、穢土(ゑど)をしかけけるを、晴明、きと見て、「あはれ世にもあひ、年なども若くて見目もよき人にこそあんめれ。式に打てけるにか。この烏は式神にこそありけれ」と思ふに、しかるべくて、この少将の生くべき報やありけん、いとほしう晴明が思えて、少将のそばへ歩み寄りて、「御前へ参らせ給ふか。さかしく申すやうなれども、何か参らせ給ふ。殿は、今夜え過ぐさせ給はじと見奉るぞ。しかるべくて、おのれには見えさせ給へるなり。いざ、させ給へ。もの心見ん」とて、一つ車に乗りければ、少将、わななきて、「あさましきことかな。さらば、助け給へ」とて、一つ車に乗りて、少将の里へ出でぬ。 昔、晴明((安倍晴明))、陣に参りたりけるに、前(さき)はなやかに追はせて、殿上人の参りけるを見れば、蔵人の少将とて、まだ若くはなやかなる人の、見目(みめ)まことに清げにて、車より下りて、内に参りたりけるほどに、この少将の上に烏の飛びて通りけるが、穢土(ゑど)をしかけけるを、晴明、きと見て、「あはれ世にもあひ、年なども若くて見目もよき人にこそあんめれ。式に打てけるにか。この烏は式神にこそありけれ」と思ふに、しかるべくて、この少将の生くべき報やありけん、いとほしう晴明が思えて、少将のそばへ歩み寄りて、「御前へ参らせ給ふか。さかしく申すやうなれども、何か参らせ給ふ。殿は、今夜え過ぐさせ給はじと見奉るぞ。しかるべくて、おのれには見えさせ給へるなり。いざ、させ給へ。もの心見ん」とて、一つ車に乗りければ、少将、わななきて、「あさましきことかな。さらば、助け給へ」とて、一つ車に乗りて、少将の里へ出でぬ。
text/yomeiuji/uji026.txt · 最終更新: 2017/12/20 23:59 by Satoshi Nakagawa