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text:yomeiuji:uji012 [2014/09/27 17:18] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji012 [2017/12/20 23:53] (現在) – [第12話(巻1・第12話)児のかい餅するに空寝したる事] Satoshi Nakagawa
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 **児のかい餅するに空寝したる事** **児のかい餅するに空寝したる事**
  
-是も今はむかし、比叡の山に児ありけり。+===== 校訂本文 =====
  
-僧たち、よひのつれづれに「いざ、かもちせん」とひけるを、この児、心せにきけり。さりとてださんをち、ざらんもわろかりなん」と思ひて、かたかたにりて寝たるよしにて出るを待けるに、すでにしいだしいたるさまにてひしめきあひたり+これも今は昔、比叡の山に児(ちご)ありけり。 
 + 
 +僧たち、のつれづれに「いざ、かもちせん」とひけるを、この児、心せにきけり。さりとてださんをち、ざらんも悪(わろ)かりなん」と思ひて、かたかたにりて寝たるよしにてで来るを待けるに、すでにし出だしたるさまにて、ひしめきあひたり。 
 + 
 +この児、「さだめて、おどろかさんずらん」と待ち居たるに、僧の、「もの申しさぶらはむ。おどろかせ給へ」と言ふを、「うれし」とは思へども、「ただ一度(ちど)にいらへんも、『待ちけるか』ともぞ思ふ」とて、「今一声呼ばれていらへん((「いらへん」は底本「いみへん」。諸本により訂正))」と念じて寝たるほどに、「や、な起こし奉りそ。幼き人は寝入り給ひにけり」と言ふ声のしければ、「あなわびし」と思ひて、「今一度起こせかし」と思ふほどに、聞けば、「ひしひし」と、た食ひに食ふ音のければ、ずちなくて、無期(むご)の後に、「え」といらへりければ、僧達、笑ふこと限りなし。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  是も今はむかし比叡の山に児ありけり僧たちよひのつれつれに 
 +  いさかひもちいせんといひけをこの児心よせにききけりりとて 
 +  しいたさんをちねさらんもわろかりなんと思ひてかたかたに 
 +  よりて寝たるよしにて出くるを待けるにすてにしいたしたるさま 
 +  にてひしめきあひたり此児定ておとろかさんすらんと待ゐたる 
 +  に僧の物申さふらはむおとろかせ給へといふをうれしとは思へとも 
 +  たた一とにいらへんも待けるかともそおもふとて今一こゑよはれて 
 +  いみへんと念してねたる程にやなおこしたてまつりそおさなき人は/15オy33 
 + 
 +  寝入給にけりといふこゑのしけれはあなわひしとおもひて今一と 
 +  おこせかしと思程にきけはひしひしとたたくひにくふ音のしけ 
 +  れはすちなくてむこの後にえいといらへたりけれは僧達わらふ 
 +  事かきりなし/15ウy34
  
-此児「定ておどろかさんずらん」と、待ゐたるに、僧の「物申さぶらはむ、おどろかせ給へ」といふを「うれし」とは思へども「ただ一どにいらへんも『待けるか』ともぞおもふ」とて、「今一こゑよばれていらへん」と念じてねたる程に「やなおこしたてまつりそ。おさなき人は寝入給にけりといふこゑのしければ「あなわびし」とおもひて「今一どおこせかし」と、思寝にきけば、「ひしひし」とただくひにくふ音のしければ、ずちなくて、むごの後に「えい」といらへたりければ、僧達わらふ事かぎりなし。 
text/yomeiuji/uji012.txt · 最終更新: 2017/12/20 23:53 by Satoshi Nakagawa