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text:yomeiuji:uji002 [2015/01/08 21:27] – [第2話(巻1・第2話)丹波国篠村、平茸生ふる事] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji002 [2017/10/15 20:52] Satoshi Nakagawa
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 **丹波国篠村、平茸生ふる事** **丹波国篠村、平茸生ふる事**
  
-これもいまむかし、丹波国篠村といふ所に、年平茸やるかたもなくおほかりけり。+これも、丹波国篠村といふ所に、年ごろ、平茸やるかたもなくかりけり。
  
-里村の者、これをりて、人にも心し、又我ひなどして、年過るに、その里にとりてむねとあるものの夢に、かしらおつかみなる法師どもの二三十人斗いできて「申べき候」と、いひければ「いかなる人ぞ」と、とふに「法師は、この年候て、宮つかひよくして候ひつるが、この里の縁きて、いまはよそへまかりなんずるの、かつはあはれにも候、又、事のよしを申さではと思ひて、よしを申なり」とふとて、うちおどろきて「こは何事ぞ」と、妻や子やなどにかたり[龍かた]程に、、その里の人の夢にも「この定にえたり」とて、あまた同様にかたれば、心もで、年もれぬ。+里村の者、これをりて、人にも心し、また、われひなどして、年ごろほどに、その里にとりてむねとあるものの夢に、おつかみなる法師どもの三十人ばかり出できて「申べきこと」とひければ「いかなる人ぞ」とふにこの法師ばらは、この年ごろて、宮ひよくして候ひつるが、この里の縁きて、いまはよそへまかりなんずることの、かつはあはれにも候ふ。また『ことのよしを申さではと思ひて、このよしを申なり」とふとて、うちおどろきて「こは何事ぞ」と、妻や子やなどにほどに、また、その里の人の夢にも「この定(ぢやう)えたり」とて、あまた同様にれば、心もで、年もれぬ。
  
-さて次のとしの九十月にもぬるに、さきるほどなれば、山に入りて茸を求むるほどに、すべて蔬おほかたえず。「いかなるにか」と、里国の者、思ひてぐるに、故仲胤僧都とて、説法ならびなき人いましけり。此事きて「こはいかに。『不浄説法する法師、平茸にまる』といふ事のある物をとの給てけり+さて次のの九十月にもなりぬるに、前々(さき)出るほどなれば、山に入りて茸を求むるほどに、すべて(くさびら)おほかたえず。「いかなることにか」と、里国の者、思ひてぐるほどに、故仲胤僧都とて、説法びなき人いましけり。このこときて「こはいかに。『不浄説法する法師、平茸にまる』といふことのあるものを」とのたまひてけり。 
 + 
 +されば、いかにもいかにも、平茸は食はざらんに欠くまじきもなり、とぞ。 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  これもいまはむかし丹波国篠村といふ所に年比平茸やる 
 +  かたもなくおほかりけり里村の者これをとりて人にも心 
 +  さし又我もくひなとして年来過る程にその里にとり 
 +  てむねとあるものの夢にかしらおつかみなる法師ともの二三 
 +  十人斗いてきて申へき事候と、いひけれはいかなる人そととふに 
 +  此法師原はこの年比候て宮つかひよくして候ひつるかこの里の 
 +  縁つきていまはよそへまかりなんする事のかつはあはれに 
 +  も候又事のよしを申さてはと思ひて比よしを申なりといふとみて 
 +  うちおとろきてこは何事そと妻や子やなとにかたり程に又その/上6オy15 
 + 
 +  里の人の夢にもこの定にみえたりとてあまた同様にかたれは 
 +  心もえて年もくれぬさて次のとしの九十月にも成ぬるにさき 
 +  さきいてくるほとなれは山に入て茸を求むるほとにすへて蔬おほ 
 +  かたみえすいかなる事にかと里国の者思ひてすくる程に故仲 
 +  胤僧都とて説法ならひなき人いましけり此事をききて 
 +  こはいかに不浄説法する法師平茸にむまるといふ事のある 
 +  物をとの給てけりされはいかにもいかにも平茸はくはさらんに事 
 +  かくましき物なりとそ/上6ウy16
  
-されば、いかにもいかにも、平茸はくはざらんに事かくまじき物なり、とぞ。 
text/yomeiuji/uji002.txt · 最終更新: 2017/12/20 23:44 by Satoshi Nakagawa