text:yamato:u_yamato172
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— | text:yamato:u_yamato172 [2017/09/27 00:31] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa | ||
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+ | 大和物語 | ||
+ | ====== 第172段 亭子の御門石山に常に詣で給ひけり・・・ ====== | ||
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+ | ===== 校訂本文 ===== | ||
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+ | 亭子の御門((宇多天皇))、石山((石山寺))に常に詣で給ひけり。「国の司((平中興))、『民疲れ、国滅びぬべし』となんわぶる」と聞こし召して、「異国々(ことくにぐに)の御荘司(みさうじ)などに仰せて」とのたまひければ、持て運びて、御まうけをつかうまつりて、詣で給ひけり。 | ||
+ | |||
+ | 近江の守、「いかに聞こし召したるにかあらん」と歎き恐れて、また、「無下にさて、過ぐし奉らんや」とて、帰らせ給ふ打出(うちいで)の浜に、世の常ならずめでたき仮屋どもを造りて、菊の花のおもしろきを植ゑて、御まうけつかうまつれりけり。国の守は、おぢ恐れて、外(ほか)に隠れをりて、ただ黒主((大伴黒主))をなん据ゑ置きたりける。 | ||
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+ | おはしまし過ぐるほどに、殿上人、「黒主は、などて、さてはさぶらふぞ」と問ひけり。院 | ||
+ | も御車おさへさせ給ひて、「何しに、ここにはあるぞ」と問はせ給ひければ、人々問ひ給ひけるに、申しける | ||
+ | |||
+ | ささら波間もなき岸を洗ふめり渚清くは君とまれとか | ||
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+ | と詠めりければ、これにめで給ひてなん、とまりて、人々に物賜びて帰らせ給ひける。 | ||
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+ | ===== 翻刻 ===== | ||
+ | |||
+ | ていしのみかといしやまにつねにま | ||
+ | うてたまひけりくにのつかさたみ | ||
+ | つかれくにほろひぬへしとなんわふる | ||
+ | ときこしめしてことくにくにのみ | ||
+ | さうしなとにおほせてとのたまひけれ | ||
+ | はもてはこひて御まうけをつかう | ||
+ | まつりてまうて給けりあふみのかみいかにきこ | ||
+ | しめしたるにかあらんとなけきを | ||
+ | それてまたむけにさてすくしたてまつ/d81l | ||
+ | |||
+ | らんやとてかへらせ給ふうちいての | ||
+ | はまによのつねならすめてたき | ||
+ | かりやともをつくりてきくの花 | ||
+ | のをもしろきをうへて御まうけ | ||
+ | つかうまつれりけりくにのかみ | ||
+ | はおちをそれてほかにかくれをりて | ||
+ | たたくろぬしをなんすへをき | ||
+ | たりけるおはしましすくるほとに | ||
+ | てんしやう人くろぬしはなとて | ||
+ | さてはさふらふそととひけり院 | ||
+ | も御くるまおさへさせたまひて/d82r | ||
+ | |||
+ | なにしにここにはあるそととはせ給け | ||
+ | れはひとひととひたまひけるに申ける | ||
+ | ささらなみまもなききしをあらふめ | ||
+ | りなきさきよくはきみとまれとか | ||
+ | とよめりけれはこれにめてたまひて | ||
+ | なんとまりて人々に物たひてかへらせ給ける/d82l | ||
text/yamato/u_yamato172.txt · 最終更新: 2017/09/27 00:31 by Satoshi Nakagawa