ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:yamato:u_yamato154
no way to compare when less than two revisions

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。


text:yamato:u_yamato154 [2017/09/12 23:19] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
行 1: 行 1:
 +大和物語
 +====== 第154段 大和の国なりける人のむすめいときよらにてありけるを・・・ ======
 +
 +===== 校訂本文 =====
 +
 +大和の国なりける人のむすめ、いときよらにてありけるを、京より来たりける男の、かいま見て見けるに、いとをかしげなりければ、盗みてかき抱(いだ)きて、馬にうち乗せて、逃げて往にけり。いとあさましう、恐しう思ひけり。
 +
 +日暮れて、竜田山に宿りぬ。草の中にあふり解き敷きて、女を抱きて臥せり。女、「恐し」と思ふことかぎりなし。
 +
 +「わびし」と思ひて、男のもの言へども、いらへもせで泣きければ、男、
 +
 +  誰(た)がみそぎゆふつけ鳥か唐衣竜田の山におりはへてなく
 +
 +女、返事、
 +
 +  竜田山((底本「川」と傍書。))岩根をさしてゆく水の行方も知らぬわがごとやなく
 +
 +と詠みて死にけり。いとあさましくて、男、抱き持ちて泣きける。
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  やまとのくになりけるひとのむすめ
 +  いときよらにてありけるを京より
 +  きたりけるおとこのかひまみてみけ
 +  るにいとをかしけなりけれはぬすみて
 +  かきいたきてむまにうちのせてに
 +  けていにけりいとあさましうをそ
 +  ろしうおもひけり日くれてたつた
 +  やまにやとりぬくさのなかにあふ
 +  りをときしきて女をいたきてふせ
 +  り女おそろしとおもふことかきりなし
 +  わひしとおもひておとこのものいへとも/d54l
 +
 +  いらへもせてなきけれはおとこ
 +    たかみそきゆふつけとりかから衣
 +    たつたのやまにをりはへてなく
 +  女返事
 +    たつたや(川)まいはねをさしてゆく
 +    みつのゆくへもしらぬわかことやなく
 +  とよみてしにけりいとあさましくて
 +  おとこいたきもちてなきける/d55r
  
text/yamato/u_yamato154.txt · 最終更新: 2017/09/12 23:19 by Satoshi Nakagawa