text:yamato:u_yamato142
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— | text:yamato:u_yamato142 [2017/09/06 17:46] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa | ||
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+ | 大和物語 | ||
+ | ====== 第142段 故御息所の御姉おほいこにあたり給ひけるなんいとらうらうしく・・・ ====== | ||
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+ | ===== 校訂本文 ===== | ||
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+ | 故御息所の御姉、おほいこにあたり給ひけるなん、いとらうらうしく、歌詠み給ふことも、おとうとたち御息所よりもまさりてなん、いますかりける。 | ||
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+ | 若き時に女親(めおや)は失せ給ひにけり。継母の手にいますかりければ、心にもののかなはぬ時もありけり。さて、詠み給ひける。 | ||
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+ | ありはてぬ命待つ間のほどばかり憂きことしげく歎かずもがな | ||
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+ | となん詠み給ひける。 | ||
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+ | 梅の花を折りて、また、 | ||
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+ | かかる香の秋もかはらで匂(いほ)ひかど((「匂ひかど」は諸本「匂ひせば」。))春恋ひしてふながめせましや | ||
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+ | と詠み給ひける。 | ||
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+ | いとよしづきて、をかしういますかりければ、よばふ人もいと多かりけれど、返しもせざりけり。「女といふ者、つひにかくて果て給ふべきよしもあらず。時々は返事し給へ」と、親も継母も言ひければ、責められて、かくなん言ひやりける。 | ||
+ | |||
+ | 思へどもかひなかるべみ忍ぶればつれなきともや人の見るらん | ||
+ | |||
+ | とばかり言ひやりて、ものも言はざりけり。かく言ひける心ばへは、親など、「男あはせん」と言ひけれど、「一生(いしやう)、男せでやみなん」といふことを、世とともに言ひける、さ言ひけるもしるく、男もせで、二十九にてなん失せ給ひにける。 | ||
+ | |||
+ | この歌ども、みな古言(ふるごと)になりたることになんありける。 | ||
+ | |||
+ | ===== 翻刻 ===== | ||
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+ | こみやすところの御あねおほいこに | ||
+ | あたりたまひけるなんいとらうらう/d29r | ||
+ | |||
+ | しくうたよみたまふこともおと | ||
+ | うとたちみやす所よりもまさりて | ||
+ | なんいますかりけるわかきときに | ||
+ | めをやはうせたまひにけりままはは | ||
+ | のてにいますかりけれはこころに | ||
+ | もののかなはぬときもありけりさ | ||
+ | てよみたまひける | ||
+ | ありはてぬいのちまつまのほとは | ||
+ | かりうきことしけくなけかすもかな | ||
+ | となんよみ給けるむめのはなを | ||
+ | をりて又/d29l | ||
+ | |||
+ | かかるかの秋もかはらてにほひかと | ||
+ | はるこひしてふなかめせましや | ||
+ | とよみたまひけるいとよしつきて | ||
+ | をかしういますかりけれはよはふ | ||
+ | ひともいとおほかりけれとかへしも | ||
+ | せさりけり女といふ物つひにかくて | ||
+ | はてたまふへきよしもあらすときとき | ||
+ | は返事したまへとをやもままははも | ||
+ | いひけれはせめられてかくなんいひ | ||
+ | やりける | ||
+ | おもへともかひなかるへみしのふ/d30r | ||
+ | |||
+ | れはつれなきともやひとのみるらん | ||
+ | とはかりいひやりてものもいはさり | ||
+ | けりかくいひけるこころはへはをやなと | ||
+ | おとこあはせんといひけれといしやう | ||
+ | おとこせてやみなんといふことを | ||
+ | よとともにいひけるさいひけるもしるくおとこ | ||
+ | もせて廿九にてなんうせ給にけりこの | ||
+ | うたともみなふることになりたる | ||
+ | ことになんありける/d30l | ||
text/yamato/u_yamato142.txt · 最終更新: 2017/09/06 17:46 by Satoshi Nakagawa