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text:yamato:u_yamato140
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text:yamato:u_yamato140 [2017/09/04 22:47] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
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 +大和物語
 +====== 第140段 故兵部卿宮昇の大納言のむすめに住み給ひけるを・・・ ======
 +
 +===== 校訂本文 =====
 +
 +故兵部卿宮((陽成天皇皇子元良親王))、昇の大納言((源昇))のむすめに住み給ひけるを、例のおまし所にはあらで、廂(ひさし)におまし敷きて、大殿籠りなどして、帰り給ひて、ほど久しうおはしまさざりけり。
 +
 +かくてのたまへりける、「かの廂に敷かれたりしものは、さながらありや。取りたてやし給ひてし」とのたまへりければ、御返事に、
 +
 +  敷きかへずありし((底本「あはし」。諸本「ありし」に従う。))ながらに草枕塵(ちり)のみぞゐる払ふ人なみ
 +
 +とありければ、御返しに、
 +
 +  草枕塵払ひに唐衣(はからころも)袂(たもと)ゆたかにたつを待てかし
 +
 +とありければ、また、
 +
 +  唐衣たつを待つ間のほどこそはわがしきたへの塵も積らめ
 +
 +となんありければ、おはしまして、また「宇治へ狩りしになん行く」とのたまひける御返しに、
 +
 +  み狩(かり)する栗駒山の鹿よりも一人寝(ぬ)る夜ぞわびしかりける
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  故兵部卿宮のほるの大納言のむす
 +  めにすみ給ひけるをれいのお
 +  まし所にはあらてひさしにお
 +  まししきておほとのこもりなとし
 +  てかへり給てほとひさしうおはし
 +  まささりけりかくての給へり
 +  けるかのひさしにしか
 +  れたりしものはさなからあり
 +  やとりたてやし給てしとのた
 +  まへりけれは御返事に
 +    しきかへすあはしなからに草まくら/d25l
 +
 +    ちりのみそゐるはらふ人なみ
 +  とありけれは御返に
 +    草まくらちりはらひにはからころも
 +    たもとゆたかにたつをまてかし
 +  とありけれは又
 +    からころもたつをまつまのほとこそは
 +    わかしきたへの塵もつもらめ
 +  となんありけれはおはしまして又宇治へ
 +  かりしになんいくとの給ける御返に(女イ)
 +    みかりするくりこまやまのしかよりも
 +    ひとりぬる夜そわひしかりける/d26r
  
text/yamato/u_yamato140.txt · 最終更新: 2017/09/04 22:47 by Satoshi Nakagawa