text:yamato:u_yamato101
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— | text:yamato:u_yamato101 [2017/08/20 18:22] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa | ||
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+ | 大和物語 | ||
+ | ====== 第101段 同じ季縄の少将病にいたうわづらひて・・・ ====== | ||
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+ | ===== 校訂本文 ===== | ||
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+ | 同じ季縄の少将((藤原季縄。[[u_yamato100|100段]]参照。))、病にいたうわづらひて、少しおこたりて、内裏(うち)に参りたりけり。 | ||
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+ | 近江の守公忠の君((源公忠))、掃部(かもん)の助にて蔵人なりけるころなりけり。その掃部の助に会ひて、言ひけるやう、「乱り心地は、いまだおこたりはてねど、いとむつかしう、心もとなう侍ればなん、参りつる。のちは知らねど、かくまで侍ること。まかり出でて、明後日(あさて)ばかり参り来ん。よきに奏し給へ」など、言ひ置きて、まかり出でぬ。 | ||
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+ | 三日ばかりありて、少将のもとより、文をなんおこせたりけるを見れば、 | ||
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+ | くやしくぞのちに会はんと契りける今日を限りと言はましものを | ||
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+ | とのみ書きたり。 | ||
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+ | いとあさましくて、涙をこぼして、使に問ふ。「いかがものし給ふ」と問へば、使も、「いと弱くなり給ひにたり」と言ひて泣くを、聞くに、さらにえ聞こえず。「みづから、ただ今参りて((底本「まいるて」。誤写とみて訂正。))」と言ひて、里に車取りにやりて待つほど、いと心もとなし。近衛の御門((陽明門))に出で立ちて、待ちつけて、乗りて馳せ行く。 | ||
+ | |||
+ | 五条にその少将の家あるに、行き着きて、見れば、いといみじく騒ぎののしりて、門々(かどかど)さしつ。死ぬるなりけり。消息いひ入るれど、何のかひなし。いみじく悲しくて、泣く泣く帰りにけり。 | ||
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+ | かくてありけることを、上(かん)のくだり奏しければ、御門もかぎりなくなん、あはれがり給ひける。 | ||
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+ | ===== 翻刻 ===== | ||
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+ | らんしける同季縄の少将やまひにいた | ||
+ | うわつらひてすこしおこたりてうち | ||
+ | にまいりたりけりあふみのかみ公忠の | ||
+ | きみかもんのすけにて蔵人なりける | ||
+ | ころなりけりそのかもんのすけに | ||
+ | あひていひけるやうみたり心ちは | ||
+ | いまたをこたりはてねといとむつか | ||
+ | しうこころもとなう侍れはなんまい | ||
+ | りつるのちはしらねとかくまて侍こと | ||
+ | まかりいててあさてはかりまいりこん | ||
+ | よきにそうしたまへなといひをきて/d50l | ||
+ | |||
+ | まかりいてぬ三日はかりありて少将 | ||
+ | のもとよりふみをなんおこせたり | ||
+ | けるをみれは | ||
+ | くやしくそのちにあはんとちき | ||
+ | りけるけふをかきりといはましものを | ||
+ | とのみかきたりいとあさましくてなみた | ||
+ | をこほしてつかひにとふいかかものし | ||
+ | たまふととへはつかひもいとよはく | ||
+ | なりたまひにたりといひてなく | ||
+ | をきくにさらにえきこえすみつか | ||
+ | らたたいままいるてといひてさとに/d51r | ||
+ | |||
+ | くるまとりにやりてまつほといと | ||
+ | こころもとなしこのゑの御かとにいて | ||
+ | たちてまちつけてのりてはせ | ||
+ | ゆく五条にその少将のいへあるに | ||
+ | いきつきてみれはいといみしくさはき | ||
+ | ののしりてかとかとさしつしぬるなり | ||
+ | けりせうそこいひいるれとなにの | ||
+ | かひなしいみしくかなしくてなくなく | ||
+ | かへりにけりかくてありけるこ | ||
+ | とをかんのくたりそうしけれは | ||
+ | みかともかきりなくなんあはれかり給ける/d51l | ||
text/yamato/u_yamato101.txt · 最終更新: 2017/08/20 18:22 by Satoshi Nakagawa