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text:yamato:u_yamato089
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text:yamato:u_yamato089 [2017/08/18 00:13] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
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 +大和物語
 +====== 第89段 修理の君に右馬の頭住みける時方のふたがりければ・・・ ======
 +
 +===== 校訂本文 =====
 +
 +修理の君に、右馬(むま)の頭(かみ)((諸本「右馬(むま)の允(ぜう)」で「藤原の千兼」。[[u_yamato013|13段]]参照))住みける時、方(かた)のふたがりければ、「方違へにまかるとてなん、え参り来ぬ」と言へりければ、
 +
 +  これならぬことをも多く違ふれば恨みむ方もなきぞわびしき
 +
 +かくて、右馬の頭、行(い)かずなりにけるころ、詠みておこせたりける。
 +
 +  いかでなほ網代(あじろ)の氷魚(ひを)に言問はん何によりてかわれを問はぬと
 +
 +と言へりければ、返し、
 +
 +  網代よりほかには氷魚のよるものか知らずは宇治(うぢ)の人に問へかし
 +
 +また、同じ女に通ひける時、つとめて詠みたりける。
 +
 +  明けぬとて急ぎもぞする逢坂の霧立ちぬとも人に聞かすな
 +
 +男、はじめごろ詠みたりける。
 +
 +  いかにしてわれは消えなん白露(しらつゆ)のかへりてのちのものは思はじ
 +
 +返し、
 +
 +  垣ほなる君が朝顔見てしがな帰りてのちはものや思ふと
 +
 +同じ女に、けぢかくものなと言ひて、帰りてのちに詠みてやりける。
 +
 +  心をし君にとどめて来にしかばもの思ふことはわれにやあるらん
 +
 +修理の返し、
 +
 +  魂はをかしきこともなかりけりよろづのものはからにぞありける
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  内匠允藤真行女
 +  修理のきみにむまのかみすみける時
 +  かたのふたかりけれはかたたかへ
 +  にまかるとてなんえまいりこぬといえ
 +  りけれは
 +    これならぬことをもおほくたか
 +    ふれはうらみむかたもなきそわひしき/d43r
 +
 +  かくて右馬のかみいかすなりにける比よ
 +  みてをこせたりける
 +    いかてなをあしろのひをにこととはん
 +    何によりてかわれをとはぬと
 +  といへりけれはかへし
 +    あしろよりほかにはひをのよるものか
 +    しらすはうちの人にとへかし
 +  又おなし女にかよひける時つとめて
 +  よみたりける
 +    あけぬとていそきもそする逢坂の
 +    きりたちぬとも人にきかすな/d43l
 +
 +  おとこはじめころよみたりける
 +    いかにしてわれはきえなんしら露の
 +    かへりてのちのものはおもはし
 +  かへし
 +    垣ほなるきみかあさかほみてしかな
 +    かへりてのちはものや思ふと
 +  おなし女にけちかく物なといひて帰りて
 +  のちによみてやりける
 +    心をし君にととめてきにしかは
 +    ものおもふことはわれ(からイ)にや有らん
 +  修理の返し/d44r
 +
 +  たましゐはをかしきこともなか
 +  りけりよろつのものはからにそありける/d44l
  
text/yamato/u_yamato089.txt · 最終更新: 2017/08/18 00:13 by Satoshi Nakagawa