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text:yamato:u_yamato083

大和物語

第83段 同じ女内の曹司に住みける時忍びて通ひ給ふ人ありけり・・・

校訂本文

同じ女1)、内の曹司(ざうし)に住みける時、忍びて通ひ給ふ人ありけり。頭なりければ、殿上につねにさぶらひ給ひけり。

雨の降る夜、曹司の蔀(しとみ)のつらに立ち寄り給ひけるも知らで、雨の漏りければ、筵(むしろ)をひき返すとて、

  思ふ人雨と降りくるものならばわがもる床(とこ)はかへさざらまし

となむ、うち言ひければ、「あはれ」と聞きて、ふと這ひ入り給ひにけり。

翻刻

おなし女うちのさうしにすみける
ときしのひてかよひたまふ人あり
けり頭なりけれは殿上につねに
さふらひたまひけりあめのふるよ
さうしのしとみのつらにたちより/d40l
たまひけるもしらてあめのもり
けれはむしろをひきかへすとて
  おもふひとあめとふりくるもの
  ならはわかもるとこはかへささらまし
となむうちいひけれはあはれときき
てふとはひいりたまひにけり/d41r
1)
右近。81段参照。
text/yamato/u_yamato083.txt · 最終更新: 2017/08/12 13:45 by Satoshi Nakagawa