text:yamato:u_yamato064
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— | text:yamato:u_yamato064 [2017/07/29 15:46] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa | ||
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+ | 大和物語 | ||
+ | ====== 第64段 平中にくからず思ふ若き女を妻のもとに率て来て置きたりけり・・・ ====== | ||
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+ | ===== 校訂本文 ===== | ||
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+ | 平中((平貞文))、にくからず思ふ若き女を、妻(め)のもとに率(ゐ)て来て置きたりけり。にくげなることどもを言ひて、妻、つひに追ひ出だしてけり。 | ||
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+ | この妻にしたがふにやありけん、らうたしと思ひながら、えとめず。いちはやく言ひければ、近くだにもえ寄らで、四尺の屏風に寄りかかりて、立てりて言ひける。「世の中の、かく思ひの外(ほか)にある、異世界(ことせかい)にものしたまふとも、忘れで消息(せうそこ)し給へ。おのれも、さなん思ふ」と言ひけり。 | ||
+ | |||
+ | この女、包みに物など包みて、車取りにやりて、待つほどなり。「いとあはれ」と思ひけり。 | ||
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+ | さて、女往にけり。十日ばかりありて((諸本「とばかりありて」))、おこせたりける。 | ||
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+ | 忘らるな忘れやしぬる春霞今朝立ちながら契りつること | ||
+ | |||
+ | ===== 翻刻 ===== | ||
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+ | 平中にくからすおもふわかき女をめの | ||
+ | もとにゐてきておきたりけり | ||
+ | にくけなることともをいひてめ | ||
+ | つひにをいいたしてけりこのめに/d31l | ||
+ | |||
+ | したかふにやありけんらうたしと | ||
+ | おもひなからえとめすいちはやくいひ | ||
+ | けれはちかくたにもえよらて四尺 | ||
+ | のひやうふによりかかりてたて | ||
+ | りていひけるよのなかのかくおもひの | ||
+ | ほかにあることせかひにものしたま | ||
+ | ふともわすれてせうそこし給へ | ||
+ | おのれもさなんおもふといひけりこの | ||
+ | 女つつみに物なとつつみて車とりに | ||
+ | やりてまつほとなりいとあはれとお | ||
+ | もひけりさて女いにけりとうかはかり/d32r | ||
+ | |||
+ | ありておこせたりける | ||
+ | わすらるなわすれやしぬる春か | ||
+ | すみけさたちなからちきりつること/d32l | ||
text/yamato/u_yamato064.txt · 最終更新: 2017/07/29 15:46 by Satoshi Nakagawa