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text:uchigiki:uchigiki02 [2018/04/20 21:17] – 作成 Satoshi Nakagawatext:uchigiki:uchigiki02 [2018/04/20 21:22] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 昔、唐に、晋の史弘(([[:text:k_konjaku:k_konjaku6-1|『今昔物語集』6-1]]によると、「秦の始皇」。始皇帝。))の時、天竺より僧(([[:text:k_konjaku:k_konjaku6-1|『今昔物語集』6-1]]では「釈の利房」。))渡れり。 昔、唐に、晋の史弘(([[:text:k_konjaku:k_konjaku6-1|『今昔物語集』6-1]]によると、「秦の始皇」。始皇帝。))の時、天竺より僧(([[:text:k_konjaku:k_konjaku6-1|『今昔物語集』6-1]]では「釈の利房」。))渡れり。
  
-王、怪しび給ひて、「これは何者、いづれの国より来たるぞ」。僧、申していはく、「釈迦牟尼仏の御弟子なり。仏法伝へむがために、はるかなる天竺より来たるなり」と申しければ、王(みかど)、嗔(いか)りて、「その体・姿、きはめて怪し。衣も体、人にたがひたり。仏の弟子と名乗る。仏といふ者知らず。これはわづらはしき者なり。ただに返すべからず。獄(ひとや)に坐(す)ゑて、今より、かくのごとく奇異(あやし)きこと言ふ者は、今、しむべきなり」とて、獄に坐ゑられぬ。+王、怪しび給ひて、「これは何者、いづれの国より来たるぞ」。僧、申していはく、「釈迦牟尼仏の御弟子なり。仏法伝へむがために、はるかなる天竺より来たるなり」と申しければ、王(みかど)、嗔(いか)りて、「その体・姿、きはめて怪し。衣も体、人にたがひたり。仏の弟子と名乗る。仏といふ者知らず。これはわづらはしき者なり。ただに返すべからず。獄(ひとや)に坐(す)ゑて、今より、かくのごとく奇異(あやし)きこと言ふ者は、今、ころしむべきなり」とて、獄に坐ゑられぬ。
  
 深く門を閉ぢて、重くいまめて置きたれど、宣旨下されて、獄に賜ひつ。獄の司(つかさ)の者、宣旨のままに、中に重罪ある者を置く所に籠(こ)めて、上((錠(ぢやう)か。))をあまたさしつ。 深く門を閉ぢて、重くいまめて置きたれど、宣旨下されて、獄に賜ひつ。獄の司(つかさ)の者、宣旨のままに、中に重罪ある者を置く所に籠(こ)めて、上((錠(ぢやう)か。))をあまたさしつ。
  
-この僧、「仏法伝ふに、悪王にあひて、かく悲しき目を見るを、わが本師釈迦如来は、失せ給ひて後、久しくなりぬれども、あらたに見給ふらん。われを助け給へ」と念じて、臥せるに、釈迦仏、丈六の体、紫磨黄金之光を放ちて、大空(おほぞら)より飛び来たり給ひて、この獄門を踏み破り給ひ入りて、取りて去給ひぬ((「去給ひぬ」は底本「去ヒヌ」。「給」の脱字みて補入。))。+この僧、「仏法伝ふに、悪王にあひて、かく悲しき目を見るを、わが本師釈迦如来は、失せ給ひて後、久しくなりぬれども、あらたに見給ふらん。われを助け給へ」と念じて、臥せるに、釈迦仏、丈六の体、紫磨黄金之光を放ちて、大空(おほぞら)より飛び来たり給ひて、この獄門を踏み破り給ひ入りて、取りて去給ひぬ((「去給ひぬ」は底本「去ヒヌ」。「給」の脱字みて補入。))。
  
 その次に、かたへの盗人ども、みな免し給ひてければ、思ひ思ひに、みな逃げ去りぬ。獄の司、虚空にものの鳴りければ、出でて見れば、金□((□は底本破損。))僧、光を放てるが、長(たけ)丈六なる、空より飛び来たりて、獄門を踏み放ちて、この居られたる天竺の僧を取りて行く音なりけり。驚きながら、その由を王に申しければ、王、怖畏、騒ぎ給ひけり。 その次に、かたへの盗人ども、みな免し給ひてければ、思ひ思ひに、みな逃げ去りぬ。獄の司、虚空にものの鳴りければ、出でて見れば、金□((□は底本破損。))僧、光を放てるが、長(たけ)丈六なる、空より飛び来たりて、獄門を踏み放ちて、この居られたる天竺の僧を取りて行く音なりけり。驚きながら、その由を王に申しければ、王、怖畏、騒ぎ給ひけり。
text/uchigiki/uchigiki02.1524226650.txt.gz · 最終更新: 2018/04/20 21:17 by Satoshi Nakagawa