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text:turezure:k_tsurezure211.txt
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text:turezure:k_tsurezure211.txt [2018/10/29 19:14] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
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 +徒然草
 +====== 第211段 よろづのことは頼むべからず・・・ ======
 +
 +===== 校訂本文 =====
 +
 +よろづのことは頼むべからず。愚かなる人は、深くものを頼むゆゑに、恨み怒(いか)ることあり。
 +
 +勢ひありとて、頼むべからず。こはき者、まづ滅ぶ。財(たから)多しとて、頼むべからず。時の間に失ひやすし。才ありとて、頼むべからず。孔子も時にあはず。徳ありとて、頼むべからず。顔回も不幸なりき。君の寵(ちよう)をも、頼むべからず。誅(ちゆう)を受くることすみやかなり。奴(やつこ)従へりとて、頼むべからず。そむき走ることあり。人の志をも、頼むべからず。必ず変ず。約をも、頼むべからず。信あること少なし。
 +
 +身をも人をも頼まざれば、是(ぜ)なる時は喜び、非(ひ)なる時は恨みず。左右(さう)広ければさはらず。前後遠ければ塞(ふさ)がらず。狭(せば)き時はひしげくだく。
 +
 +心を用ゐること少しきにして、厳しき時は、ものにさかひ争ひて破る。ゆるくして柔らかなる時は、一毛も損ぜず。
 +
 +人は天地の霊なり。天地は限る所なし。人の性(しやう)、何ぞ異ならん。寛大にして極まらざる時は、喜怒これにさはらずして、もののために煩はず。
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  万の事はたのむべからず。をろかなる人
 +  は。ふかく物を頼ゆへに。うらみいかる事
 +  あり。いきほひありとてたのむべからず。
 +  こはき物先ほろぶ。財おほしとて頼/k2-52l
 +
 +http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0052.jpg
 +
 +  べからず。時のまに失ひやすし。才あり
 +  とて頼べからず。孔子も時にあはず。徳
 +  ありとて頼べからず。顔回も不幸なり
 +  き。君の寵をも頼べからず。誅をうくる
 +  事速也。奴したがへりとて頼べからす。そ
 +  むきはしる事あり。人の志をもたのむ
 +  べからず。必変ず。約をも頼べからず。信
 +  ある事すくなし。身をも人をもたのまざ
 +  れば。是なる時はよろこび。非なるときは
 +  うらみず。左右ひろければさはらず。前/k2-53r
 +
 +  後遠ければ塞がらず。せばき時はひ
 +  しけくだく。心を用る事。少しきにして
 +  きびしき時は。物にさかひあらそひて
 +  やぶる。ゆるくしてやはらかなる時は。一毛
 +  も損せず。人は天地の霊也。天地はかぎる
 +  所なし。人の性なんぞことならん。寛大
 +  にしてきはまらざる時は。喜怒是に
 +  さはらずして。物のためにわづらはず/k2-53l
 +
 +http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0053.jpg
  
text/turezure/k_tsurezure211.txt.txt · 最終更新: 2018/10/29 19:14 by Satoshi Nakagawa