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text:turezure:k_tsurezure206.txt
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text:turezure:k_tsurezure206.txt [2018/10/23 23:39] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
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 +徒然草
 +====== 第206段 徳大寺右大臣殿検非違使の別当の時中門使庁の評定行はれけるほどに・・・ ======
 +
 +===== 校訂本文 =====
 +
 +徳大寺右大臣殿((徳大寺公孝))、検非違使の別当の時、中門(ちゆうもん)にて、使庁の評定行はれけるほどに、官人章兼((中原章兼))が牛放れて、庁の内へ入りて、大理の座の浜床(はまゆか)の上に上りて、にれうちかみて臥したりけり。
 +
 +「重き怪異なり」とて、牛を陰陽師のもとへつかはすべきよし、おのおの申しけるを、父の相国((徳大寺実基))聞き給ひて、「牛に分別なし。足あれば、いづくへか上らざらん。尫弱(わうじやく)の官人、たまたま出仕の微牛(びぎう)を取らるべきやうなし」とて、牛をば主(ぬし)に返して、臥したりける畳をば替へられにけり。あへて凶事なかりけるとなん。
 +
 +「怪しみを見て怪しまざる時は、怪しみかへりて破る」と言へり。
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  徳大寺右大臣殿。検非違使の別当の時。
 +  中門にて。使庁の評定をこなはれける
 +  程に。官人章兼が牛はなれて。庁の
 +  うちへ入て大理の座のはまゆかの上に
 +  のぼりてにれうちかみて臥たりけり。
 +  をもき怪異なりとて。牛を陰陽師のも/k2-50r
 +
 +  とへつかはすべきよし各申けるを。父の
 +  相国聞給て。牛に分別なし。足あれば
 +  いづくへかのぼらざらん。尫弱の官人。たま
 +  たま出仕の微牛をとらるべきやうなし
 +  とて。牛をば主にかへして。臥たりけるたた
 +  みをばかへられにけり。あへて凶事なかり
 +  けるとなん。あやしみを見てあやしま
 +  ざる時は。あやしみ。かへりて破るといへり/k2-50l
 +
 +http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0050.jpg
  
text/turezure/k_tsurezure206.txt.txt · 最終更新: 2018/10/23 23:39 by Satoshi Nakagawa