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text:turezure:k_tsurezure190.txt
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text:turezure:k_tsurezure190.txt [2018/10/19 21:57] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
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 +徒然草
 +====== 第190段 妻といふものこそ男の持つまじきものなれ・・・ ======
 +
 +===== 校訂本文 =====
 +
 +妻(め)といふものこそ、男(をのこ)の持つまじきものなれ。「いつも独り住みにて」など聞くこそ、心にくけれ。
 +
 +「誰がしが婿になりぬ」とも、また、「いかなる女を取り据ゑて、相住む」など聞きつれば、無下に心劣りせらるるわざなり。「ことなることなき女を、よしと思ひ定めてこそ添ひ居たらめ」と、いやしくも推し量られ、よき女ならば、「この男をぞらうたくして、あが仏とまもり居たらめ」、たとへば、「さばかりにこそ」と思えぬべし。
 +
 +まして、家のうちを行ひ治めたる女、いと口惜し。子など出で来て、かしづき愛したる、心憂し。男亡くなりて後、尼になりて年寄りたるありさま、亡き跡まであさまし。
 +
 +いかなる女なりとも、明け暮れ添ひ見んには、いと心づきなく、憎かりなん。女のためも、半空(なかぞら)にこそならめ、よそながら時々通ひ住まんこそ、年月経ても、絶えぬながらひともならめ。あからさまに来て、泊り居などせんは、めづらしかりぬべし。
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  妻といふ物こそ。をのこの持まじき物
 +  なれ。いつも独ずみにてなど聞こそ。
 +  心にくけれ。誰がしが婿に成ぬとも。
 +  又如何なる女を取すへて。相住など聞つれば。
 +  无下に心をとりせらるるわざ也。ことなる事
 +  なき女をよしとおもひさだめてこそそひ/k2-43r
 +
 +  ゐたらめと。賤くもをしはかられ。よき
 +  女ならば。此男をぞらうたくして。あか
 +  仏とまもりゐたらめ。たとへばさばかりにこそ
 +  と覚えぬべし。まして。家のうちを
 +  をこなひおさめたる女。いと口おし。子など
 +  いできて。かしづき愛したる心うし。
 +  男なくなりて後。尼になりて年より
 +  たるありさま。なき跡まで浅まし。いか
 +  なる女成とも明暮そひ見んには。いと心づ
 +  きなくにくかりなん。女のためも半空/k2-43l
 +
 +http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0043.jpg
 +
 +  にこそならめ。よそながらときどき通ひ
 +  すまんこそ。年月へてもたえぬながらひ
 +  ともならめ。あからさまにきてとまり
 +  ゐなどせんは。めづらしかりぬべし/k2-44r
 +
 +http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0044.jpg
  
text/turezure/k_tsurezure190.txt.txt · 最終更新: 2018/10/19 21:57 by Satoshi Nakagawa