text:towazu:towazu2-36
とはずがたり
巻2 36 今朝は夜の中に還御とてひしめけば起き別れぬるも・・・
校訂本文
今朝は、夜の中に還御とてひしめけば、起き別れぬるも、「憂きから残る」と言ひぬべきに、これは御車の尻に参りたるに、西園寺1)も御車に参る。清水の橋の上までは、みな御車をやり続けたりしに、京極より御幸(ぎよかう)は北へなるに、残りは西へやり別れし折は、何となく名残惜しきやうに車の影の見られ侍りしこそ、「こは、いつよりの習はしぞ」と、わが心ながらおぼつかなく侍りしか。
翻刻
りぬるこそけさは夜の中に還御とてひしめけはおき わかれぬるもうきからのこるといひぬへきにこれは御車 のしりにまいりたるにさいおん寺も御くるまにまいるき よ水のはしのうへまてはみな御くるまをやりつつけたり しに京こくより御かうは北へなるにのこりはにしへやりわ かれしおりはなにとなくなこりおしきやうに車のかけ のみられ侍しこそこはいつよりのならはしそとわかこころ なからおほつかなく侍しか/s108r k2-86
1)
西園寺実兼
text/towazu/towazu2-36.txt · 最終更新: 2019/07/18 10:54 by Satoshi Nakagawa