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text:towazu:towazu1-34 [2019/04/13 11:33] – 作成 Satoshi Nakagawatext:towazu:towazu1-34 [2019/04/18 16:02] (現在) – [翻刻] Satoshi Nakagawa
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-さるほどに、二月の末つ方より、心地例なら覚えて、物も食はず。しばしは風邪など思ふほどに、やうやう「見し夢の名残にや」と思ひ合はせらるるも、何とまぎらはすべきやうもなきことなれば、せめての罪の報ひも思ひ知られて、心の内の物思ひ、やる方なけれども、かくともいかが言ひ出でん((「言ひ出でん」は底本「いひけん」))、神わざにことづけて、里がちにのみ居たれば、常に来つつ((主語は雪の曙))、見知ることもありけるにや、「さにこそ」など言ふより、いとどねんごろなるさまに言ひ通ひつつ、「君((後深草院))に知られ奉らぬわざもがな」と言ふ。+さるほどに、二月の末つ方より、心地例なら覚えて、物も食はず。しばしは風邪など思ふほどに、やうやう「見し夢の名残にや」と思ひ合はせらるるも、何とまぎらはすべきやうもなきことなれば、せめての罪の報ひも思ひ知られて、心の内の物思ひ、やる方なけれども、かくともいかが言ひ出でん((「言ひ出でん」は底本「いひけん」))、神わざにことづけて、里がちにのみ居たれば、常に来つつ((主語は雪の曙))、見知ることもありけるにや、「さにこそ」など言ふより、いとどねんごろなるさまに言ひ通ひつつ、「君((後深草院))に知られ奉らぬわざもがな」と言ふ。
  
 祈りいしいし心を尽くすも、「誰(た)が咎(とが)とか言はむ」と思ひ続けられてあるほどに、二月の末よりは御所ざまへも参り通ひしかば、五月のころは四月(よつき)ばかりのよしを思し召させたれども、まことには六月(むつき)なれば、違(ちが)ひざまも行末いとあさましきに、六月七日、「里へ出でよ」としきりに言はるれば((主語は雪の曙))、「何事ぞ」と思ひて出でたれば、帯を手づから用意して、「ことさらと思ひて、四月にてあるべかりしを、世の恐しさに、今日までになりぬるを、御所より十二日は着帯(ちやくたい)のよし聞くを、ことに思ふやうありて」と言はるるぞ、心ざしもなほざりならす思ゆれども、身のなり行かむ果てぞ悲しく覚え侍りし。 祈りいしいし心を尽くすも、「誰(た)が咎(とが)とか言はむ」と思ひ続けられてあるほどに、二月の末よりは御所ざまへも参り通ひしかば、五月のころは四月(よつき)ばかりのよしを思し召させたれども、まことには六月(むつき)なれば、違(ちが)ひざまも行末いとあさましきに、六月七日、「里へ出でよ」としきりに言はるれば((主語は雪の曙))、「何事ぞ」と思ひて出でたれば、帯を手づから用意して、「ことさらと思ひて、四月にてあるべかりしを、世の恐しさに、今日までになりぬるを、御所より十二日は着帯(ちやくたい)のよし聞くを、ことに思ふやうありて」と言はるるぞ、心ざしもなほざりならす思ゆれども、身のなり行かむ果てぞ悲しく覚え侍りし。
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-  けいせいなといふ御さたたえてなしさる程に二月の末つ/k43r k1-76+  けいせいなといふ御さたたえてなしさる程に二月の末つ/s43r k1-76
  
   かたより心ちれいならす覚て物もくはすしはしはかせ   かたより心ちれいならす覚て物もくはすしはしはかせ
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   つくすもたかとかとかいはむと思つつけられてある程に二月   つくすもたかとかとかいはむと思つつけられてある程に二月
   のすゑよりは御所さまへもまいりかよひしかは五月の比は四月   のすゑよりは御所さまへもまいりかよひしかは五月の比は四月
-  はかりのよしをおほしめさせたれともまことには六月なれは/k43l k1-77+  はかりのよしをおほしめさせたれともまことには六月なれは/s43l k1-77
  
 http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/43 http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/43
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   にはかにわつらふ事ありし程にまいることもかなわさりしかは   にはかにわつらふ事ありし程にまいることもかなわさりしかは
   十二日の夕かたせんせうしさきのれいにとて御おひをもち   十二日の夕かたせんせうしさきのれいにとて御おひをもち
-  てきたりたるをみるにも故大納言のいかにかなと思さはかれし/k44r k1-78+  てきたりたるをみるにも故大納言のいかにかなと思さはかれし/s44r k1-78
  
   よの事思ひてられて袖には露のひまなさいかならす秋のなら   よの事思ひてられて袖には露のひまなさいかならす秋のなら
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   もいかにとはかりなすへき心ちせすされはとて水のそこまて   もいかにとはかりなすへき心ちせすされはとて水のそこまて
   思入へきにしあらねはつれなくすくるにつけてもいかにせん   思入へきにしあらねはつれなくすくるにつけてもいかにせん
-  といひおもふよりほかの事なきに九月にもなりぬよの/k44l k1-79+  といひおもふよりほかの事なきに九月にもなりぬよの/s44l k1-79
  
 http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/44 http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/44
text/towazu/towazu1-34.1555122812.txt.gz · 最終更新: 2019/04/13 11:33 by Satoshi Nakagawa