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text:takamura:s_takamura2-03

篁物語

2-3 この男は若き間はいとねんごろに見えでほかに夜離れなどもしけり・・・

校訂本文

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この男は、若き間は、いとねんごろに見えで、ほかに夜離(よが)れなどもしけり。成り出でて宰相よりもかみになりにけり。これなむ名に立つ篁1)なりけり。才学(さいがく)はさらにもいはず、歌作ることも得たり顔に、この国の人にはたえずぞありける。この子孫(こむまご)どもにて2)、かく歌詠まぬはなかりけり。

聞き給はさりし姉二所(ふたところ)は、いと悪(わろ)き人の妻(め)にて、この御徳を見給ひける。いとよく成り出でければ、この三の君をまた二つなくもてかしづき奉る。今の人、まさに大学の衆を聟(むこ)に取る大臣もあらむや。ただ、心たかき才劣り給ふなるべし。またあらじかし、かやうに思ひて文(ふみ)作る人は。

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翻刻

かしといひけるこのおとこはわかき
あひたはいとねんころにみえてほ
かによかれなともしけりなり
いててさいさうよりもかみになり
にけりこれなむなにたつたかむら/s24r
なりけりさいかくはさらにも
いはすうたつくることもえたり顔
にこの国の人にはたえすそ有ける
このこむこ(ら)ののこてかくうたよま
ぬはなかりけりききたまはさり
しあね二所はいとわろき人の
めにてこの御とくをみたまひける
いとよくなりいてけれはこの三の
君をまた二なくもてかしつき
たてまつるいまの人まさに太かく/s24l

https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100002868/viewer/24

のしふをむこにとる大臣も
あらむやたた心たかきさいを
とりたまふなるへしまたあらし
かしかやうにおもひてふみつ
くるひとは/s25r

https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100002868/viewer/25

1)
小野篁
2)
「子孫どもにて」は底本「こむこ(ら)ののこて」。「ら」は傍書。諸本により訂正。
text/takamura/s_takamura2-03.txt · 最終更新: 2022/08/29 02:39 by Satoshi Nakagawa