text:shaseki:ko_shaseki10b-06
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text:shaseki:ko_shaseki10b-06 [2019/05/07 22:28] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | text:shaseki:ko_shaseki10b-06 [2019/05/08 18:34] (現在) – Satoshi Nakagawa | ||
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沙石集 | 沙石集 | ||
- | ====== 巻10第6話(124) 松島法心上人の事 ====== | + | ====== 巻10第6話(124) (松島法心上人の事) ====== |
===== 校訂本文 ===== | ===== 校訂本文 ===== | ||
- | 奥州松島の長老法心房は、晩出家の人にて、一文不通なりけれども、渡宋して径山の無準((無準師範))和尚の下にて、円相の中の丁(てい)の字の公案を得て、坐禅すること多年、尻に瘡(かさ)出でて、膿み腐り、虫なんどの出づるほどなりけれども、九年まて常生しけり。公案の丁字、よろづの物の中に見えけるを、もち破りて心は地はありと言ひける。 | + | ((底本、標題なし。))奥州松島の長老法心房は、晩出家の人にて、一文不通なりけれども、渡宋して径山の無準((無準師範))和尚の下にて、円相の中の丁(てい)の字の公案を得て、坐禅すること多年、尻に瘡(かさ)出でて、膿み腐り、虫なんどの出づるほどなりけれども、九年まて常生しけり。公案の丁字、よろづの物の中に見えけるを、もち破りて心は地はありと言ひける。 |
その後帰朝して、松島の寺にて行ひけり。「臨終のこと、七日ありて終るべし」と侍者に告ぐるに、ことなる労なきゆゑに信ぜず。その日になりて、斎了(さいれう)に倚座に座して、侍者に辞世の頌を書かす。「来し時も明々たり。去る時も明々たり。これすなはち何物ぞ」と書けと言ふに、侍者、「今一句足り候はず」と言へば、喝すること一喝して、やがて入滅す。 | その後帰朝して、松島の寺にて行ひけり。「臨終のこと、七日ありて終るべし」と侍者に告ぐるに、ことなる労なきゆゑに信ぜず。その日になりて、斎了(さいれう)に倚座に座して、侍者に辞世の頌を書かす。「来し時も明々たり。去る時も明々たり。これすなはち何物ぞ」と書けと言ふに、侍者、「今一句足り候はず」と言へば、喝すること一喝して、やがて入滅す。 |
text/shaseki/ko_shaseki10b-06.txt · 最終更新: 2019/05/08 18:34 by Satoshi Nakagawa