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text:shaseki:ko_shaseki09a-03 [2019/03/17 19:14] – 作成 Satoshi Nakagawatext:shaseki:ko_shaseki09a-03 [2019/03/17 19:15] (現在) Satoshi Nakagawa
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 丹後の国に、なにがしとかやいふ俗ありけり。名も承りしが忘れ侍り。小名ながら、家中貧しからずして、年たけて失せにける。遺言に、所分の状は、中陰過ぎて開くべきよし、言ひ置きてけり。 丹後の国に、なにがしとかやいふ俗ありけり。名も承りしが忘れ侍り。小名ながら、家中貧しからずして、年たけて失せにける。遺言に、所分の状は、中陰過ぎて開くべきよし、言ひ置きてけり。
  
-子息、その義にて開き見るに、男女の子あまたありけるに、嫡子には宗(むね)と譲りて、次男より次第に少しづつ減じて((「減じて」は底本「咸シテ」。諸本により訂正。)、むらなく譲りてけり。+子息、その義にて開き見るに、男女の子あまたありけるに、嫡子には宗(むね)と譲りて、次男より次第に少しづつ減じて((「減じて」は底本「咸シテ」。諸本により訂正。))、むらなく譲りてけり。
  
 嫡子、申しけるは、「故殿の譲りの上は、子細申すべきにあらねども、所存の旨、いかでか申さざるべき。故殿は、果報もさることにて、はからひもかしこくおはせしかば、京・鎌倉の宮仕・公役なども、かひがひしく沙汰せられき。この所領を、かくあまたに分けて、面々に安堵申し宮仕(みやづか)はれんこと、ゆゆしき大事なり。身苦しく、人目見苦し。されば、一人を面にして、家を継がせて、余人は便宜の所に庵室作りて、入道になりて、念仏申して、一期身やすく、後世も頼もしくて過ごしたく侍り。わが身、嫡子に当りて侍れども、器量もなく、身ながら覚ゆれば、この中に一人選(え)りて、家を継がせ申したく侍れば、おのおの評定して、はからひ給ふべし」と言ふに、「しかるべし」といふ弟なし。 嫡子、申しけるは、「故殿の譲りの上は、子細申すべきにあらねども、所存の旨、いかでか申さざるべき。故殿は、果報もさることにて、はからひもかしこくおはせしかば、京・鎌倉の宮仕・公役なども、かひがひしく沙汰せられき。この所領を、かくあまたに分けて、面々に安堵申し宮仕(みやづか)はれんこと、ゆゆしき大事なり。身苦しく、人目見苦し。されば、一人を面にして、家を継がせて、余人は便宜の所に庵室作りて、入道になりて、念仏申して、一期身やすく、後世も頼もしくて過ごしたく侍り。わが身、嫡子に当りて侍れども、器量もなく、身ながら覚ゆれば、この中に一人選(え)りて、家を継がせ申したく侍れば、おのおの評定して、はからひ給ふべし」と言ふに、「しかるべし」といふ弟なし。
text/shaseki/ko_shaseki09a-03.txt · 最終更新: 2019/03/17 19:15 by Satoshi Nakagawa