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text:shaseki:ko_shaseki06b-17

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text:shaseki:ko_shaseki06b-17 [2019/01/24 19:03]
Satoshi Nakagawa 作成
text:shaseki:ko_shaseki06b-17 [2019/01/24 19:04] (現在)
Satoshi Nakagawa [校訂本文]
ライン 8: ライン 8:
 京の者にて、念仏者のありけるに、この女、あひかたらひて住みけるが、あまりに心安からぬ世間を見て、この念仏者、申しけるは、「かく心苦しくて住まんよりは、都にては、とてもかくても過ぎなん」とて、都へぞ誘ひける。 京の者にて、念仏者のありけるに、この女、あひかたらひて住みけるが、あまりに心安からぬ世間を見て、この念仏者、申しけるは、「かく心苦しくて住まんよりは、都にては、とてもかくても過ぎなん」とて、都へぞ誘ひける。
  
-この女、母に離れんことを歎きて、用ゐざりけれども、たびたび申し勧めて、果ては、母の尼公に、「『かくて、心苦しくおはせんよりは、都にては、さすが住み慣れて侍れば、これほどのことはあらじ』と思ひて、『女房を具して上らん』と申すを、離れ奉らんことを歎きて、用ゐ給はず」と言ふ時に、母、申しけるは、「まことに貧しくとも、あひ添ひてこそ侍るべけれ。さりながら、一人一人も心安くてこそありたければ、ただ上り給へ」と言ふ。女は、ふつと用ゐざりけり。「何さまにも、つひには離るべき道なれば、かかる田舎の住居(すまゐ)なぐさむ方なき所に((「なぐさむ方なき所に」は底本「スマヰナクサメカタナキ所ニ」。諸本により訂正。))、ともに心苦しくて過ぐさんよりは、ただ上り給へ。離れたりとも、『さて都にも心安くおはすらん』と思はば、心をもなぐさむべし。さあらんにつけては、孝養にてこそあらめ」とて、上るべきよし、あながちに言ひければ、泣く泣く別れを悲しみながら、あひ具せられて、女、上りぬ。+この女、母に離れんことを歎きて、用ゐざりけれども、たびたび申し勧めて、果ては、母の尼公に、「『かくて、心苦しくおはせんよりは、都にては、さすが住み慣れて侍れば、これほどのことはあらじ』と思ひて、『女房を具して上らん』と申すを、離れ奉らんことを歎きて、用ゐ給はず」と言ふ時に、母、申しけるは、「まことに貧しくとも、あひ添ひてこそ侍るべけれ。さりながら、一人一人も心安くてこそありたければ、ただ上り給へ」と言ふ。女は、ふつと用ゐざりけり。「何さまにも、つひには離るべき道なれば、かかる田舎の住居(すまゐ)なぐさむ方なき所に((「なぐさむ方なき所に」は底本「スマヰナクサメカタナキ所ニ」。諸本により訂正。))、ともに心苦しくて過ぐさんよりは、ただ上り給へ。離れたりとも、『さて都にも心安くおはすらん』と思はば、心をもなぐさむべし。さあらんにつけては、孝養にてこそあらめ」とて、上るべきよし、あながちに言ひければ、泣く泣く別れを悲しみながら、あひ具せられて、女、上りぬ。
  
 さて、京にてあひ住みけるほどに、田舎のこと、風の便りもなかりければ、互ひにおとづるることもなし。明け暮れは母のことを申してぞ泣きける。 さて、京にてあひ住みけるほどに、田舎のこと、風の便りもなかりければ、互ひにおとづるることもなし。明け暮れは母のことを申してぞ泣きける。


text/shaseki/ko_shaseki06b-17.txt · 最終更新: 2019/01/24 19:04 by Satoshi Nakagawa