text:shaseki:ko_shaseki05a-07
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text:shaseki:ko_shaseki05a-07 [2018/12/05 12:10] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:shaseki:ko_shaseki05a-07 [2018/12/05 12:20] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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洛陽にある女房、世間さかさかしく、世智弁聡なるありけり。常に使ひつけたる女童(めのわらは)に教へけるは、「人の世間は大事なり。人の使(つかひ)などのあらんに、もの食はせんことも、われに言へ。人により折によりて、多くも少なくも食はすべし。ただし、客人などのあらん時、一合二合など言はんもまさなし。『やさしきことには、源氏の言葉』とぞ言へ。源氏の巻の次第を覚えよ。一、桐壺・二、帚木・三、若紫などいふぞかし。されば、『桐壺などにもせよかし』と言はば、一合と心得よ。二・三もかく心得よ」と教へ置きつ。 | 洛陽にある女房、世間さかさかしく、世智弁聡なるありけり。常に使ひつけたる女童(めのわらは)に教へけるは、「人の世間は大事なり。人の使(つかひ)などのあらんに、もの食はせんことも、われに言へ。人により折によりて、多くも少なくも食はすべし。ただし、客人などのあらん時、一合二合など言はんもまさなし。『やさしきことには、源氏の言葉』とぞ言へ。源氏の巻の次第を覚えよ。一、桐壺・二、帚木・三、若紫などいふぞかし。されば、『桐壺などにもせよかし』と言はば、一合と心得よ。二・三もかく心得よ」と教へ置きつ。 | ||
- | ある時、客人の女房と、源氏など見て遊びけるに、遠所より急く使ひありけるを、「あの御使には、いかがに候ふべきや」と言ふに、「掃木、若紫」など言ひて、たるたるとして明らかならざりけるを、心地悪しく思ひて、つぶやきける、「あら心づきなの様や。まだこそ、いかなる昔の衣通姫(そとほりひめ)・小野小町といひし人も、源氏かしき料にしたること聞かね」と言ひける。 | + | ある時、客人の女房と、源氏など見て遊びけるに、遠所より急く使ひありけるを、「あの御使には、いかがに候ふべきや」と言ふに、「掃木、若紫」など言ひて、たるたるとして明らかならざりけるを、心地悪しく思ひて、つぶやきける、「あら心づきなの様や。まだこそ、いかなる昔の衣通姫(そとほりひめ)・小野小町といひし人も、源氏が食料(じきれう)にしたること聞かね」と言ひける。 |
いみじき利口なり。この法橋の小法師も、かくさかさかしくは、「まだこそ、昔の伝教((最澄))・弘法((空海))も、『仁王経、田の糞に入れよ』といふこと仰せられたること聞かね」と言はましと思え侍り。 | いみじき利口なり。この法橋の小法師も、かくさかさかしくは、「まだこそ、昔の伝教((最澄))・弘法((空海))も、『仁王経、田の糞に入れよ』といふこと仰せられたること聞かね」と言はましと思え侍り。 |
text/shaseki/ko_shaseki05a-07.txt · 最終更新: 2018/12/06 12:31 by Satoshi Nakagawa