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text:shaseki:ko_shaseki01b-08 [2018/07/16 16:11] – 作成 Satoshi Nakagawatext:shaseki:ko_shaseki01b-08 [2018/07/16 16:13] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 示現に蒙りけるは、「まことに不審なるべし。これは、因果の理(ことわり)も知らず、いたづらに物の命を殺して浮びがたき者、『われに供ぜん』と思ふ心にて、咎(とが)をわれに譲りて、かれは罪軽(かろ)く、殺さるる生類は、報命尽きて、なにとなくいたづらに捨つべき命を我に供する因縁によりて、仏道に入る方便をなす。よつて、わが力にて報命尽きたる鱗を、かり寄せて捕らするなり」と示し給ひければ((「ければ」は底本「ケルハ」。諸本により訂正))、不審はれにけり。 示現に蒙りけるは、「まことに不審なるべし。これは、因果の理(ことわり)も知らず、いたづらに物の命を殺して浮びがたき者、『われに供ぜん』と思ふ心にて、咎(とが)をわれに譲りて、かれは罪軽(かろ)く、殺さるる生類は、報命尽きて、なにとなくいたづらに捨つべき命を我に供する因縁によりて、仏道に入る方便をなす。よつて、わが力にて報命尽きたる鱗を、かり寄せて捕らするなり」と示し給ひければ((「ければ」は底本「ケルハ」。諸本により訂正))、不審はれにけり。
  
-江州の湖((琵琶湖))に、大きなる鯉を浦人捕りて殺さんとしけるを、山僧、直(あたひ)を取らせて、湖へ入れにけり。その夜の夢に、老翁一人来ていはく、「今日、わが命を助け給ふこと、大きに本意なく侍るなり。そのゆゑは、いたづらに海中にして死せば、出離の縁欠くべし。賀茂((賀茂神社))の贄(いけにえ)になりて、和光の方便にて出離すべく候ひなるに、命のび候ひぬ」と、恨みたる色にて言ひけると、古物語にあり(([[:text:hosshinju:h_hosshinju8-31|『発心集』8-13]]参照。))。+江州の湖((琵琶湖))に、大きなる鯉を浦人捕りて殺さんとしけるを、山僧、直(あたひ)を取らせて、湖へ入れにけり。その夜の夢に、老翁一人来ていはく、「今日、わが命を助け給ふこと、大きに本意なく侍るなり。そのゆゑは、いたづらに海中にして死せば、出離の縁欠くべし。賀茂((賀茂神社))の贄(いけにえ)になりて、和光の方便にて出離すべく候ひなるに、命のび候ひぬ」と、恨みたる色にて言ひけると、古物語にあり(([[:text:hosshinju:h_hosshinju8-13|『発心集』8-13]]参照。))。
  
 江州の湖を行くに、鮒の船に飛び入りたることありけるに、一説に山法師、一説には寺法師 江州の湖を行くに、鮒の船に飛び入りたることありけるに、一説に山法師、一説には寺法師
text/shaseki/ko_shaseki01b-08.txt · 最終更新: 2018/07/16 16:13 by Satoshi Nakagawa