text:shaseki:ko_shaseki01a-03
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text:shaseki:ko_shaseki01a-03 [2018/07/03 22:26] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:shaseki:ko_shaseki01a-03 [2018/07/04 16:38] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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沙石集 | 沙石集 | ||
- | ====== 巻1第3話(3) 出離神明の祈の事 ====== | + | ====== 巻1第3話(3) 出離を神明に祈る事 ====== |
===== 校訂本文 ===== | ===== 校訂本文 ===== | ||
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天台の心ならば、性具(しやうぐ)の三千十界の依正(えしやう)、みな法身所具の万徳なれば、性徳の十界を修徳にあらはして、普現色身の力をもて、九界の迷情を度す。また密教の心ならば、四重曼荼羅は法身所具の十界なり。内証自性会の本質をうつして、外用大悲の利益をたる。顕密の意によりて、はかり知りぬ。法身地より十界の身を現じて、衆生を利益す。 | 天台の心ならば、性具(しやうぐ)の三千十界の依正(えしやう)、みな法身所具の万徳なれば、性徳の十界を修徳にあらはして、普現色身の力をもて、九界の迷情を度す。また密教の心ならば、四重曼荼羅は法身所具の十界なり。内証自性会の本質をうつして、外用大悲の利益をたる。顕密の意によりて、はかり知りぬ。法身地より十界の身を現じて、衆生を利益す。 | ||
- | 妙体の上の妙用なれば、水を離れぬ波のごとし。真如をはなれたる縁起なし((「縁起なし」は底本「縁(ヱン)ナ起(ヲコラ)し」。諸本により訂正))。宝蔵論いはく、『海の千波を湧かす、千波、すなはち海水なり」と。しかれば、西天上代の機には、仏菩薩の形を現じて、これを度す。わが国は、粟散辺地なり。剛強の衆生、因果を知らず。仏法を信ぜぬたぐひには、同体無縁の慈悲によりて、等流法身(ほうしん)の応用を垂れ、悪鬼・邪神の形を現じ、毒蛇・猛獣の身を示し、暴悪のやからを調伏して、仏法に入れ給ふ。 | + | 妙体の上の妙用なれば、水を離れぬ波のごとし。真如をはなれたる縁起なし((「縁起なし」は底本「縁(ヱン)ナ起(ヲコラ)シ」。諸本により訂正))。宝蔵論いはく、『海の千波を湧かす、千波、すなはち海水なり」と。しかれば、西天上代の機には、仏菩薩の形を現じて、これを度す。わが国は、粟散辺地なり。剛強の衆生、因果を知らず。仏法を信ぜぬたぐひには、同体無縁の慈悲によりて、等流法身(ほうしん)の応用を垂れ、悪鬼・邪神の形を現じ、毒蛇・猛獣の身を示し、暴悪のやからを調伏して、仏法に入れ給ふ。 |
されば、他国有縁の身をのみ重くして、本朝相応の形を軽(かろ)しむべからず。わが朝は、神国として、大権、迹(あと)を垂れ給ふ。また、われらみながら((諸本「我等みな彼の」))、孫裔なり。気を同じくする因縁浅からず。このほかの本尊を尋ねば、かへりて感応隔たりぬべし。 | されば、他国有縁の身をのみ重くして、本朝相応の形を軽(かろ)しむべからず。わが朝は、神国として、大権、迹(あと)を垂れ給ふ。また、われらみながら((諸本「我等みな彼の」))、孫裔なり。気を同じくする因縁浅からず。このほかの本尊を尋ねば、かへりて感応隔たりぬべし。 | ||
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出離神明祈事 | 出離神明祈事 | ||
- | 三井寺の長吏公顕僧正と申しは顕密の明匠にて道心有人 | + | 三井寺ノ長吏公顕僧正ト申シハ顕密ノ明匠ニテ道心有人 |
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- | 後世の物語なんと通夜せられけりさて其朝浄衣き幣もちて一 | + | 後世ノ物語ナント通夜セラレケリサテ其朝浄衣キ幣モチテ一 |
- | 間なる所の帳かけたるに向て所作せられけれは善阿思はずの作 | + | 間ナル所ノ帳カケタルニ向テ所作セラレケレハ善阿思ハズノ作 |
- | 法かなとみけり三日か程かはることなしさて事の体能々みて朝の | + | 法カナトミケリ三日カ程カハルコトナシサテ事ノ体能々ミテ朝ノ |
- | 御所作こそことやうに見奉れいかなる御行にかと申けれはすすみて | + | 御所作コソコトヤウニ見奉レイカナル御行ニカト申ケレハススミテ |
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- | 諸神の御名をかきたてまつりて此一間なる所に請し置奉て心/k1-8r | + | 諸神ノ御名ヲカキタテマツリテ此一間ナル所ニ請シ置奉テ心/k1-8r |
- | 経三十巻神呪なんど誦して法楽に備て出離の道偏に和光 | + | 経三十巻神呪ナンド誦シテ法楽ニ備テ出離ノ道偏ニ和光 |
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- | 機に随てさたまれる準なし聖人は常の心なし万人の心をもて心 | + | 機ニ随テサタマレル準ナシ聖人ハ常ノ心ナシ万人ノ心ヲモテ心 |
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- | 論云仏は非天非人と故に能天能なり然は無相法身所 | + | 論云仏ハ非天非人ト故ニ能天能ナリ然ハ無相法身所 |
- | 具の十界皆一智毘盧の全体なり天台の心ならは性具の三千 | + | 具ノ十界皆一智毘盧ノ全体ナリ天台ノ心ナラハ性具ノ三千 |
- | 十界の依正みな法身所具の万徳なれは性徳の十界を修 | + | 十界ノ依正ミナ法身所具ノ万徳ナレハ性徳ノ十界ヲ修 |
- | 徳にあらはして普現色身の力をもて九界の迷情を度す又密教 | + | 徳ニアラハシテ普現色身ノ力ヲモテ九界ノ迷情ヲ度ス又密教 |
- | | + | |
- | 本質をうつして外用大悲の利益をたる顕密の意によりてはかり | + | 本質ヲウツシテ外用大悲ノ利益ヲタル顕密ノ意ニヨリテハカリ |
- | 知ぬ法身地より十界のみを現して衆生を利益す妙体の上の妙 | + | 知ヌ法身地ヨリ十界ノミヲ現シテ衆生ヲ利益ス妙体ノ上ノ妙 |
- | 用なれは水をはなれぬ波のごとし真如をはなれたる縁な起し宝蔵/k1-8l | + | 用ナレハ水ヲハナレヌ波ノゴトシ真如ヲハナレタル縁ナ起シ宝蔵/k1-8l |
https:// | https:// | ||
- | 論云海の千波を湧す千波即海水也と然は西天上代の機に | + | 論云海ノ千波ヲ湧ス千波即海水也ト然ハ西天上代ノ機ニ |
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- | 衆生因果をしらす仏法を信せぬたくひには同体無縁の慈悲に | + | 衆生因果ヲシラス仏法ヲ信セヌタクヒニハ同体無縁ノ慈悲ニ |
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- | 猛獣のみをしめし暴悪のやからを調伏して仏法に入給されは他 | + | 猛獣ノミヲシメシ暴悪ノヤカラヲ調伏シテ仏法ニ入給サレハ他 |
- | 国有縁のみをのみ重くして本朝相応のかたちをかろしむへからす我 | + | 国有縁ノミヲノミ重クシテ本朝相応ノカタチヲカロシムヘカラス我 |
- | 朝は神国として大権迹をたれ給又我等みなから孫裔也気を同 | + | 朝ハ神国トシテ大権迹ヲタレ給又我等ミナカラ孫裔也気ヲ同 |
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- | 申さんにはしかし金をもて人畜の形をつくる形をみて金をわする | + | 申サンニハシカシ金ヲモテ人畜ノ形ヲツクル形ヲミテ金ヲワスル |
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- | 法身無相の金をもて四重円壇十界随類のかたちをつくる形/k1-9r | + | 法身無相ノ金ヲモテ四重円壇十界随類ノカタチヲツクル形/k1-9r |
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- | 機にちかつきて強剛の衆生を利する慈悲すくれたりされは和光 | + | 機ニチカツキテ強剛ノ衆生ヲ利スル慈悲スクレタリサレハ和光 |
- | 同塵こそ諸仏の慈悲の極なれと信してかくの如の行儀ことやう | + | 同塵コソ諸仏ノ慈悲ノ極ナレト信シテカクノ如ノ行儀コトヤウ |
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- | 摩訶止観をときて止観と者高尚の者は高尚し卑劣の者はひ | + | 摩訶止観ヲトキテ止観ト者高尚ノ者ハ高尚シ卑劣ノ者ハヒ |
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https:// | https:// | ||
- | 炎魔の身も毘盧の形も実には四種法身を備へ五智無際智 | + | 炎魔ノ身モ毘盧ノ形モ実ニハ四種法身ヲ備ヘ五智無際智 |
- | | + | |
- | 法身の心地を開きぬへしされは古徳の云く阿鼻依正は全処極 | + | 法身ノ心地ヲ開キヌヘシサレハ古徳ノ云ク阿鼻依正ハ全処極 |
- | 聖自心毘盧身土不踰凡下一念又三種の即身成仏と者 | + | 聖自心毘盧身土不踰凡下一念又三種ノ即身成仏ト者 |
- | 理具の成仏と者人々本是仏也我執によりてあらはれす諸仏 | + | 理具ノ成仏ト者人々本是仏也我執ニヨリテアラハレス諸仏 |
- | | + | |
- | 者已成の仏の三業の妙用をまなもて増上縁として我心に具 | + | 者已成ノ仏ノ三業ノ妙用ヲマナモテ増上縁トシテ我心ニ具 |
- | 足する無尽荘厳恒沙の徳用をあらはすなり信心まことありて | + | 足スル無尽荘厳恒沙ノ徳用ヲアラハスナリ信心マコトアリテ |
- | 我三業仏の三業に相応する時は行人即ち仏と成るなり村 | + | 我三業仏ノ三業ニ相応スル時ハ行人即チ仏ト成ルナリ村 |
- | 上の御宇の事にや内裏にて五壇の法を修せられけるに慈慧僧 | + | 上ノ御宇ノ事ニヤ内裏ニテ五壇ノ法ヲ修セラレケルニ慈慧僧 |
- | 正は中壇の阿闍梨にておはしけるか御門ひそかに御覧しけるに | + | 正ハ中壇ノ阿闍梨ニテオハシケルカ御門ヒソカニ御覧シケルニ |
- | 行法の中に不動に成て本尊にすこしもたかひ給はす寛朝僧正/w1-10r | + | 行法ノ中ニ不動ニ成テ本尊ニスコシモタカヒ給ハス寛朝僧正/k1-10r |
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- | 正と成けり御門これを御覧して不便の事かな寛朝は妄念のをこ | + | 正ト成ケリ御門コレヲ御覧シテ不便ノ事カナ寛朝ハ妄念ノヲコ |
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- | 皆如来蔵普賢菩薩自体遍故と説きて我等が全体法身也 | + | 皆如来蔵普賢菩薩自体遍故ト説キテ我等ガ全体法身也 |
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法身流転五道説名衆生即此法身修行六度名為菩 | 法身流転五道説名衆生即此法身修行六度名為菩 | ||
- | 薩即此法身反流尽源説名為仏といへり今垂迹を思に即 | + | 薩即此法身反流尽源説名為仏トイヘリ今垂迹ヲ思ニ即 |
- | 此法身和光同塵名為神明とこそ心えられて侍れ然に本地 | + | 此法身和光同塵名為神明トコソ心エラレテ侍レ然ニ本地 |
- | 垂跡其意おなしけれとも機にのそむ利益暫く勝劣有へしわか | + | 垂跡其意オナシケレトモ機ニノソム利益暫ク勝劣有ヘシワカ |
- | 国の利益は垂跡のおもて猶すくれて御坐をやそのゆへは昔役の | + | 国ノ利益ハ垂跡ノオモテ猶スクレテ御坐ヲヤソノユヘハ昔役ノ |
- | 行者吉野の山上におこなはれけるに釈迦の像現し給へるを此 | + | 行者吉野ノ山上ニオコナハレケルニ釈迦ノ像現シ給ヘルヲ此 |
- | 御形にては此国の衆生は化しかたかるへしかくれさせ給へと申さ/w1-10l | + | 御形ニテハ此国ノ衆生ハ化シカタカルヘシカクレサセ給ヘト申サ/k1-10l |
https:// | https:// | ||
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- | 時当時の蔵王権現とておそろしけなる御形を現し給ける時 | + | 時当時ノ蔵王権現トテオソロシケナル御形ヲ現シ給ケル時 |
- | 此こそ我国の能化と申しけれは今に跡を垂給へり釈尊劫 | + | 此コソ我国ノ能化ト申シケレハ今ニ跡ヲ垂給ヘリ釈尊劫 |
- | 尽の時は夜叉と成て無道心の者をとりくらふて人をすすめて | + | 尽ノ時ハ夜叉ト成テ無道心ノ者ヲトリクラフテ人ヲススメテ |
- | 道心をおこさしめたまふもこの心なり行人の信心ふかくして心を | + | 道心ヲオコサシメタマフモコノ心ナリ行人ノ信心フカクシテ心ヲ |
- | 一にしつつしみ敬ことまことある時りやくにあつかる我国の風儀 | + | 一ニシツツシミ敬コトマコトアル時リヤクニアツカル我国ノ風儀 |
- | 神明はあらたに賞罰有故に信敬を厚し仏菩薩は理に相応し | + | 神明ハアラタニ賞罰有故ニ信敬ヲ厚シ仏菩薩ハ理ニ相応シ |
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- | 重しされは愚痴のやからをりやくする方便こそ実にふかき慈悲の | + | 重シサレハ愚痴ノヤカラヲリヤクスル方便コソ実ニフカキ慈悲ノ |
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- | 青きかことく尊事は仏より出て仏よりもたときはたた和光神/w1-11r | + | 青キカコトク尊事ハ仏ヨリ出テ仏ヨリモタトキハタタ和光神/k1-11r |
- | 明の慈悲利益の色なるをや古徳の寺を建立し給かならす先勧 | + | 明ノ慈悲利益ノ色ナルヲヤ古徳ノ寺ヲ建立シ給カナラス先勧 |
- | 請神をあかむるも和光の方便をはなれて仏法たちかたきには彼 | + | 請神ヲアカムルモ和光ノ方便ヲハナレテ仏法タチカタキニハ彼 |
- | 僧正の意楽かかるおもむきにこそ心有らん人かの迹をまなひ給 | + | 僧正ノ意楽カカルオモムキニコソ心有ラン人カノ迹ヲマナヒ給 |
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- | 皆和光の慈悲甚深の化儀也只神明と同也/w1-11l | + | 皆和光ノ慈悲甚深ノ化儀也只神明ト同也/k1-11l |
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text/shaseki/ko_shaseki01a-03.1530624376.txt.gz · 最終更新: 2018/07/03 22:26 by Satoshi Nakagawa