ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:sesuisho:n_sesuisho3-075
no way to compare when less than two revisions

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。


text:sesuisho:n_sesuisho3-075 [2021/10/23 17:36] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
行 1: 行 1:
 +[[index.html|醒睡笑]] 巻3 文の品々
 +====== 9 さもとらしき女房の下衆など連れたるが清水寺に詣で来て・・・ ======
 +
 +===== 校訂本文 =====
 +
 +[[n_sesuisho3-074|<<PREV]] [[index.html|『醒睡笑』TOP]] [[n_sesuisho3-076|NEXT>>]]
 +
 +さもとらしき女房の、下衆(げす)など連れたるが、清水寺に詣で来て、舞台のこなたかなた立ちやすらひしが、順礼の、矢立(やたて)を差し、侍(さむらひ)めけるあるを見付け、下衆をつかはし頼みやう、「近ごろはばかり覚え候へども、人のくれし文の返りごとを、誰(たれ)頼まん者もなし、ひたすらに扶持(ふち)を得ん」とあれば、とやかうの斟酌(しんしやく)に及ばず、傍らにいたりぬ。
 +
 +女房、懐より料紙(れうし)取り出だし渡し、いろいろの文(ぶん)を好む。かの順礼は、いろはをさへ習はぬ者なりしが、今度西国物詣での楽書をせんまでに、「筑後の国の住人柳川のなにがし」と、これよりほかは一字もなし。黒みづくるほど、紙一重ねに書きくどきたり。文のうち、いづれもいづれも、「筑後の国の住人柳川のなにがし」と上書(うはがき)ともにこれなれば、恋のさめたる風流や。
 +
 +[[n_sesuisho3-074|<<PREV]] [[index.html|『醒睡笑』TOP]] [[n_sesuisho3-076|NEXT>>]]
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  一 さもとらしき女房の下主なとつれたるが
 +    清水寺にまうで来て舞臺のこなたか
 +    なた立やすらひしが順礼のやたてをさし
 +    侍めけるあるを見つけ下主をつかはしたのみ
 +    やうちかころはばかりおほえ候へとも人のくれ
 +    し文のかへり事をたれたのまん者もなし/n3-34l
 +
 +    ひたすらにふちをえんとあれはとやかうの斟
 +    酌におよはすかたはらにいたりぬ女房懐より
 +    料紙とりいたしわたしいろいろのふんを好む
 +    彼順礼はいろはをさへならはぬ者なりしか
 +    今度西国物詣の楽書をせんまてに筑後
 +    の国の住人柳川のなにかしとこれよりほ
 +    かは一字もなしくろみずくるほと紙一
 +    かさねに書くときたり文のうちいつれもいつれも
 +    筑後の国の住人柳川のなにかしとうは/n3-35r
 +
 +    かきともにこれなれは恋のさめたる風流や/n3-35l
  
text/sesuisho/n_sesuisho3-075.txt · 最終更新: 2021/10/23 17:36 by Satoshi Nakagawa