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text:sesuisho:n_sesuisho1-005

醒睡笑 巻1 謂へば謂はるる物の由来

5 宗祇宗長と連れ立ち浦の夕に立ち出であそばれしに・・・

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宗祇、宗長と連れ立ち、浦の夕に立ち出であそばれしに、漁人の網に藻(も)を引き上げたり。「これは何と名をいふぞ」と問はれたれば、「『め』とも申し、『も』とも申す」と答ふ。

時に祇公、「やれ、これは良い前句や」とて、

  めともいふなりもともいふなり

宗長に、「付けられよ」とありければ、

  引き連れて野飼ひの牛の帰るさに

牝牛は「うんめ」と鳴き、牡牛は「うんも」と鳴くなる。祇公、感ぜられたり。

宗長の、「一句沙汰あれ」と所望にて、

  読むいろは教ゆる指の下を見よ

「ゆ」の下は「め」なり、「ひ」の下は「も」なり。

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一 宗祇(そうき)宗長(そうちやう)とつれたち浦の夕に立出あそ/n1-6r
  はれしに漁人のあみに藻(も)を引上たり
  是はなにと名をいふぞととはれたれはめとも
  申しも共申とこたふ時に祇公やれ是はよい
  前句やとてめともいふなりもともいふなり
  宗長につけられよとありけれは
   引(ひき)つれて野かひのうしの帰るさに
  妻牛はうんめとなき男(お)牛はうんもとなく
  なる祇公感(かん)せられたり宗長の一句(く)沙汰(さた)
  あれと所望にて/n1-6l
   よむいろはをしゆる指のしたをみよ
  ゆの下はめなりひの下はもなり/n1-7r
text/sesuisho/n_sesuisho1-005.txt · 最終更新: 2021/03/30 22:25 by Satoshi Nakagawa