text:senjusho:m_senjusho09-02
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text:senjusho:m_senjusho09-02 [2016/10/08 19:10] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | text:senjusho:m_senjusho09-02 [2017/04/09 22:12] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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- | 昔、大江の貞基((大江貞基・三河入道・寂照・円通大師))といふ博士ありけり。身は朝につかへ、心は隠にありて((「ありて」は底本「のりて」。諸本により訂正。))、つねに、「人間の栄耀は因縁浅し、林下の幽閑は気味深し」と思ひ取りながら、さるべき縁にあはざるほどに、髻(もとどり)をささげて、世の中に交はりて侍りけるが、年ごろ、去りがたく思えける女の身まかりけるより、ふつに思ひ取りて、清水の上綱と聞こえ給へりし智者の御もとにゆきて((底本、「御」の下三字虫損。))、かしらおろし、戒受け給へりにけり((底本「給へり」の下二字虫損。))。 | + | 昔、大江の貞基((大江定基・三河入道・寂照・円通大師))といふ博士ありけり。身は朝につかへ、心は隠にありて((「ありて」は底本「のりて」。諸本により訂正。))、つねに、「人間の栄耀は因縁浅し、林下の幽閑は気味深し」と思ひ取りながら、さるべき縁にあはざるほどに、髻(もとどり)をささげて、世の中に交はりて侍りけるが、年ごろ、去りがたく思えける女の身まかりけるより、ふつに思ひ取りて、清水の上綱と聞こえ給へりし智者の御もとにゆきて((底本、「御」の下三字虫損。))、かしらおろし、戒受け給へりにけり((底本「給へり」の下二字虫損。))。 |
そののち、いくばくのほども経ずして、保胤の内記((慶滋保胤))のもとにおはして、「え去らぬ方にさしとどめられて、はしたなめ、わづらはしめられし、憂き世の絆(ほだし)を離れてこそ侍れ」とのたまはするに、内記もかねてよりうらやましく思はるる道なれば、あざやかなる袂も、しぼるばかりにて侍りける。 | そののち、いくばくのほども経ずして、保胤の内記((慶滋保胤))のもとにおはして、「え去らぬ方にさしとどめられて、はしたなめ、わづらはしめられし、憂き世の絆(ほだし)を離れてこそ侍れ」とのたまはするに、内記もかねてよりうらやましく思はるる道なれば、あざやかなる袂も、しぼるばかりにて侍りける。 |
text/senjusho/m_senjusho09-02.1475921436.txt.gz · 最終更新: 2016/10/08 19:10 by Satoshi Nakagawa