text:senjusho:m_senjusho07-01
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text:senjusho:m_senjusho07-01 [2016/08/06 15:37] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:senjusho:m_senjusho07-01 [2016/08/06 15:42] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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かくて、なほ行くほどに、かすかに火の見えければ、嬉しく思えて、駒を早めて、近くならん | かくて、なほ行くほどに、かすかに火の見えければ、嬉しく思えて、駒を早めて、近くならん | ||
- | ことを急ぐ。からくして((「からくして」は底本「かうくして」。諸本により訂正。))たづね着き、見れば、四壁あばれて内もさらにとなるかと、気高くらうたき女房の、髪ゆりかけて、事を弾き侍り。「こは、誰人ならん」と、見る目めづらに思えて、急ぎ門を叩きて、「宿借らん」と言ふに、この女房、とばかりありて、「ふつに思ひよらず」ともてはなちつるを、なほあながちに言ひければ、とばかりうちためらひて、「さらば、これへ」とて入りたり。 | + | ことを急ぐ。からくして((「からくして」は底本「かうくして」。諸本により訂正。))たづね着き、見れば、四壁あばれて内もさらにとなるかと、気高くらうたき女房の、髪ゆりかけて、琴を弾き侍り。「こは、誰人ならん」と、見る目めづらに思えて、急ぎ門を叩きて、「宿借らん」と言ふに、この女房、とばかりありて、「ふつに思ひよらず」ともてはなちつるを、なほあながちに言ひければ、とばかりうちためらひて、「さらば、これへ」とて入りたり。 |
あらはにては、さもあばれて見えけれど、内にては、さる屋に、高灯台に火かき立てて、几帳を垂れたり。宿近付き見れば、いよいよ恋ひまさりて思え侍りける。琴の音、常よりもおもしろく、心も澄みわたりてぞ侍りける。「さても、かかる野中には、何とてか住みおはします。いとおぼつかなく」なんど言へば、「この三年、この所には住み侍るなり」と答ふ。 | あらはにては、さもあばれて見えけれど、内にては、さる屋に、高灯台に火かき立てて、几帳を垂れたり。宿近付き見れば、いよいよ恋ひまさりて思え侍りける。琴の音、常よりもおもしろく、心も澄みわたりてぞ侍りける。「さても、かかる野中には、何とてか住みおはします。いとおぼつかなく」なんど言へば、「この三年、この所には住み侍るなり」と答ふ。 |
text/senjusho/m_senjusho07-01.1470465476.txt.gz · 最終更新: 2016/08/06 15:37 by Satoshi Nakagawa