text:mumyosho:u_mumyosho020
無名抄
第20話 業平家
校訂本文
業平家
また、業平中将の家は、三条の坊門より南、高倉より西に、高倉面に近くまで侍りき。
柱なども常にも似ず、ちまき柱といふ物にて侍りけるを、いつごろの人の仕業(しわざ)にか、後に例の柱のやうに削りなしてなん侍りし。長押(なげし)も、皆まろに角もなくつひなりて、まことに古代の所と見え侍りき。中ごろ、晴明(はれあき)が封(ふ)じたりけるとて、火にも焼けずして、その久しさありけれど、世の末にはかひなくて、一年(ひととせ)の火に焼けにき。
翻刻
業平家 又業平中将の家は三条の坊門より南、たか くらより西に高倉面にちかくまて侍きはし らなともつねにもにすちまきはしらといふ物にて/e22l
侍けるをいつころの人のしわさにか後にれいのは しらのやうにけつりなしてなん侍りしなけしも みなまろにかともなくつひなりてまことにこたいの 所とみえ侍き中比はれあきかふしたりけるとて 火にもやけすしてそのひさしさありけれと世の すゑにはかひなくてひととせの火にやけにき/e23r
text/mumyosho/u_mumyosho020.txt · 最終更新: 2014/09/14 16:23 by Satoshi Nakagawa