text:mogyuwaka:ndl_mogyuwaka14-42
蒙求和歌
第14第42話(242) 西門投巫
校訂本文
西門投巫
後漢の西門豹、鄴県の令たり。その所の習ひにて、河伯神を祀る時、人の女(むすめ)を飾りて、河伯神の妻(め)と名付けて、生きながら水に入れけり。親・兄弟(はらから)、惜しみ悲しむこと限りなかりけり。
西門、このことを聞きて、「その時、われに告げよ」と言ひけり。来たり告ぐる時、行きて、大巫嫗、並びに、弟子の女の三老とて、このことに司る者どもを、しかしながら水に入れければ、その所の長者以下、みな頭(かうべ)を叩きて、血流して、恐れをののきて、色を失ひて、拝みけり。
これより、人の女の命を保つことを得たりとなむ言へり。
せきとむる人なかりせばかはかみや思はぬ波になほ沈ままし
翻刻
西門(モム)投(トフ)巫(フ) 後漢ノ西門豹(ハウ)鄴(ケフ)県ノ令(レイ)タリソノ/トコロノナラヒニテ河伯神ヲマツルトキ人ノ/d2-52l
ムスメヲカサリテ河伯神ノメトナツケテイキナカラ水ニイレケリ ヲヤハラカラヲシミカナシムコトカキリナカリケリ西門コノコトヲ キキテソノトキワレニツケヨトイヒケリキタリツクルトキユキ テ大巫(フ)嫗(ク)ナラヒニ弟子ノ女ノ三老(ラウ)トテコノコトニツカサ トルモノトモヲシカシナカラ水ニイレケレハソノトコロノ長者以下 ミナカフヘヲタタキチヲナカシテヲソレヲノノキテイロヲウシ ナヒテヲカミケリコレヨリ人ノムスメノイノチヲタモツコ トヲエタリトナムイヘリ セキトムル人ナカリセハカハカミヤ ヲモハヌナミニナヲシツママシ/d2-53r
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka14-42.txt · 最終更新: 2018/04/06 19:07 by Satoshi Nakagawa