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蒙求和歌

第14第38話(238) 優旃滑稽

校訂本文

優旃滑稽

優旃は秦の倡(しやう)なり。たけ短かくして、世の常に笑言を好みけり。戯言(たはぶれごと)を言ひけるが、その言葉、ことに政理にかなひけるなり。

始皇帝、群臣に酒を賜ひけるに、冬の天に寒雨降(くだ)りけるに、階楯の人、みな濡れしほれて、寒かりけり。優旃、檻(かん)に寄りていはく、「なんぢ、たけ高けれども、雨のうちに立てり。われ、たけ短かけれども、濡るることなし」と言ひけり。おほやけ、聞き給ひて、なかば休め、かへられけり。

また、おほやけ、苑囿を大きに増さむとし給ひけるを聞きて、優旃がいはく、「善いかな。敵(あた)、東(ひむがし)より来たらば、鳥獣(とりけだもの)多くして、これを防がるべし」と言ひけり。おほやけ、聞き給ひて、そのことを止(と)められにけり。

また、二世帝の時1)、城に漆(うるし)塗らむとし給ふと聞きて、優旃がいはく、「善いかな。敵(あた)の来たらむ時、漆によりて登ることあたはざらむことを」と言へり。帝、聞き給ひて、止められにけり。

戯(たはぶ)れに言へること、しかしながら、まことの言葉にてなむありける。

  何となく口すさぶかと聞こへしは世のため深きまことなりけり

翻刻

優旃(セム)滑(コツ)稽  〃〃ハ秦ノ倡(シヤウ)ナリタケミシカクシテ/ヨノツネニ咲言ヲコノミケリタハフレコ
トヲイヒケルカソノコトハコトニ政理ニカナイケルナリ始皇帝群
臣ニ酒ヲタマヒケルニ冬ノ天ニ寒雨クタリケルニ階楯(シユム)ノ人
ミナヌレシホレテサムカリケリ優旃檻(カム)ニヨリテ云クナムチ
タケタカケレトモアメノウチニタテリワレタケミシカケレトモヌルル
コトナシトイヒケリヲホヤケキキタマヒテナカハヤスメカエラ
レケリ又ヲホヤケ苑(ヱム)囿(イフ)ヲヲホキニマサムトシタマヒケルヲ
キキテ優旃カイハクヨイカナアタヒムカシヨリキタラハトリ
ケタモノヲホクシテコレヲフセカルヘシトイヒケリヲホヤケキキ/d2-51l
タマヒテソノコトヲトメラレニケリ又二世帝ノトキ城(セ□ニ)
ウルシヌラムトシタマフトキキテ優旃カイハクヨイカナ
アタノキタラムトキウルシニヨリテノホルコトアタハサラムコトヲ
トイヘリ帝キキタマヒテトメラレニケリタハフレニイヘル
コトシカシナカラマコトノコトハニテナムアリケル
  ナニトナククチスサフカトキコヘシハヨノタメフカキマコトナリケリ/d2-52r
1)
胡亥
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka14-38.txt · 最終更新: 2018/04/05 21:19 by Satoshi Nakagawa
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