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蒙求和歌

第13第6話(186) 山簡倒載

校訂本文

山簡倒載

山簡、字は季倫、荊州刺史たりき。

家を出でて、必ず酒に酔ひてのみぞ帰りける。峴山の南に、范蠡、魚を養(やしな)ひて、魚池を作れり。池のほとりに、竹・柊(ひさぎ)・いろいろの蓮(はちす)・菱(ひし)なんどを植ゑまはして、折々の景気、心を動かさずといふことなし。天下の人、来たり集まりて遊ぶ所なり。

山簡、常にこの池に来たりて、おほきに酔(ゑ)ひて、「わが高陽池なり」と言ひて、あらぬ気色(けしき)になりて帰る。襄陽城中の童(わらはべ)、歌を作りていはく、「山公何許往。至逍遥高陽池。日夕倒載帰。酩酊无所知。(山公、何れの許(ところ)にか往(ゆ)く。逍遥高陽池に至る。日夕倒載して帰る。酩酊して知る所無し)」。

馬に乗りて白接籬を逆さまにしけるなり。接籬1)の白帽あり。白き鷺、翅(つばさ)の上に、長き族毛有り。これを取りて作るなりと言へり

永嘉三年に天下おほきに乱れて、万方静かならざりけるも、山簡ひとり、酒に酔ふこと怠らざりけり。

  夏の池に涼み暮らして今日もなほ影さかさまにかへる波かな

翻刻

山簡倒(タウ)載(セイ)  〃〃字ハ季倫荊州刺史(シシ)タリキ/家ヲイテテカナラス酒ニ酔テノミソカヘ
リケル峴(ケム)山ノ南ニ范(ハム)蠡(レイ)養(ヤシナヒテ)魚ヲ作(ツクレリ)魚池ヲ〃ノホトリニ
タケヒサキイロイロノハチスヒシナントヲウヘマハシテヲリヲリノ景気(ケイキ)
心ヲウコカサスト云コトナシ天下ノ人キタリアツマリテアソフトコ
ロナリ山簡ツネニコノ池ニキタリテヲホキニヱヒテワカ高陽池ナリ/d2-33r
トイヒテアラヌケシキニナリテカヘル襄(シヤウ)陽(ヤウ)城中ノワラハヘウタヲ
ツクリテ云ク山(サム)公(コウ)何(イツレノ)許(トコロニカ)往(ユク)至(イタル)逍遥高(カウ)陽(ヤウ)池(チニ)日(シツ)夕(セキ)倒(タウ)
載(セイソ)帰(カヘル)酩酊无シ所(トコロ)知ル馬(ムマ)ニノリテ白接(セツ)籬(リ)ヲサカサマニシ
ケルナリ接羅ノ白(ハク)帽(ホウ)アリ白キ鷺(サキ)翅(ツハサノ)上(ウエニ)有長族毛コレ
ヲトリテツクルナリトイヘリ永嘉三年ニ天下オホキニミタレテ
万ハウシツカナラサリケルモ山簡ヒトリ酒ニ酔コトヲコタラサリケリ
      ナツノイケニススミクラシテケフモナヲ
      カケサカサマニカヘルナミカナ/d2-33l
1)
底本「接羅」。諸本同じ。「白接籬」の表記に合わせる。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka13-06.txt · 最終更新: 2018/03/04 17:44 by Satoshi Nakagawa
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