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蒙求和歌

第12第4話(174) 蔡邕倒屣

校訂本文

蔡邕倒屣

中郎将蔡邕、賢才、世に聞こえ、管絃、道を極めたりし人なり。

昔、王粲1)を見て、ねむごろに讃めけり。その後、家に賓客を集めて大会する時、王粲、門のほとりに来てのぞめりと聞きて、屣(くつ)を倒して、急ぎ出でて、迎へていはく、「なんぢ、王公孫なり。異才あり。わが家の書籍・文章、ことごとくに与ふべし」と言へり。

王粲、齢(よはひ)、いとけなく、形、短少なり。一座の人、ことごとに目驚かしけり。十七にして司徒たりけり。

蔡邕、柯亭の館に至りて、竹椽を見て、「良竹なり」と言ひて、取りて笛に選り、声、世にすぐれたり。また、大山に桐の木を焚きて、飯をかしぐ者あり。焼けはためく声を聞きて、「良木なり」と悟りて、琴に作るに、はなはだ美声あり。焼け目を作り残せり。焦尾琴と名付けて宝物たり。

  蔡邕枕銘云、哲人降鑒居安聞傾。

  きり残すゑたけの百木(ももき)も身にしみて人を知りける心のみかは/d2-29l

翻刻

蔡(サイ)邕(ヨウ)倒屣(シ)   中良将蔡邕賢才世ニキコエ/管絃ミチヲキハメタリシ人也
昔王粲ヲミテネムコロニホメケリソノ後家ニ賓客ヲ
アツメテ大会スル時王粲門ノホトリニ来テノソメリト/d2-29r
キキテ倒屣(クツヲ)イソキ出テムカヘテ云クナムチ王公孫ナリ
異才アリワカ家ノ書籍文章コトコトクニアタフヘシト云ヘリ王粲
ヨハヒイトケナクカタチ短少ナリ一座ノ人コトコトニメヲトロカシ
ケリ十七ニシテ司徒タリケリ蔡邕柯亭ノ館ニイタリテ
竹椽ヲミテ良竹ナリト云テトリテフヱニエリコヱヨニスクレ
タリ又大山ニ桐ノ木ヲタキテ飯ヲカシクモノアリヤケハタメ
クコエヲキキテ良木ナリトサトリテ琴ニツクルニハナハタ美声
アリヤケメヲツクリノコセリ焦尾琴トナツケテ宝物タリ
  蔡邕枕銘云哲人降鑒居安聞傾
  キリノコスヱタケノモモキモミニシミテ人ヲシリケル心ノミカハ/d2-29l
1)
「王粲」は底本「王祭」。文脈により訂正。なお、「祭」となっているのはここだけ。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka12-04.txt · 最終更新: 2018/02/26 20:56 by Satoshi Nakagawa
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