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蒙求和歌

第11第19話(169) 王果石崖

校訂本文

王果石崖

将軍王果、昔、益州の太守として、任に赴くに、道に三峡を過ぎけり。舟の内に寄り、江岸の石壁の上、千余丈をのぞみ見るに、槨(ひつぎ)に似たる物、岸の半ばのほとりにかかれりけり。道行き人に問ふに、「これを見ること、久しくなりぬ」と言ひけり。

人を寄せて見するに、すなはち一つの槨(ひつぎ)なりけり。中に骸骨あり。傍(かたは)らに石誌あり。銘にいはく、「三百年の後、水、我を漂(ただよ)はして、長江の垂り行て及びてに堕ちんと欲す。堕つとも堕ちずとも、王果に遇はんと欲す」と書けり。

王果、これを見て、愴然としていはく、「数百年の前(さき)に、あるべしといふことを知れり。われ、見捨つべきにあらず」。

すなはち、あらため埋(うづ)めて、祀りして、涙を落して去りぬ。

  会はばやと思ふ心の朽ちせでや屍(かばね)ののちもわれを待ちける

翻刻

王果石崖(カイ)  将軍王果ムカシ益州ノ大守トシテ/任ニヲモムクニミチニ三峡ヲスキケリ
舟ノウチニヨリ江岸ノ石壁ノウヘ千余丈ヲノソミミルニ槨(ニ/ヒツキ)
ニタルモノキシノナカハノホトリニカカレリケリミチユキ人ニトフニコレヲ
ミル事ヒサシクナリヌト云ケリ人ヲヨセテミスルニスナハチヒトツノ
ヒツキナリケリナカニ骸骨アリカタハラニ石誌(シ/シルシ)アリ銘ニ云ク
三百年ノ後水漂ヨハシテ我ヲ行テ及ヒテ長江ノ垂リニ欲堕シト
欲トモ堕不堕遇ハント王果ニカケリ王果コレヲミテ愴然トシテ
云ク数百年ノサキニアルヘシト云コトヲシレリワレミスツヘキニア
ラススナハチアラタメウヅメテマツリシテナミタヲヲトシテサリヌ/d2-26l
    アハハヤト思フ心ノクチセテヤ
    カハネノノチモワレヲマチケル/d2-27r
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka11-19.txt · 最終更新: 2018/02/21 17:06 by Satoshi Nakagawa
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