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蒙求和歌

第11第17話(167) 緑珠墜楼

校訂本文

緑珠墜楼

緑珠は石崇が妓女なり。艶色美麗にして、情け深く、すべてもののあはれを知れりけり。舞の曲の妙(たへ)なるのみにあらず、笛をさへに吹きける。石崇、これに心を移して、年月を経けり。石崇、金谷別館の清涼台に登りて、清流をむすびて、緑珠とともに涼みけり。

時に、孫秀といふ人、「緑珠をいかで得てしがな」と思へりけり。孫秀、使おこせて、石崇に緑珠を乞ひけり。石崇、かたへの妓女を数十人を仕立てて、羅縠を着せて、姿を飾り、蘭麝をを包みて、匂ひを添へつつ、並べ据ゑて、選ばはしむに、使、緑珠を心ざせり。緑珠は、わが年ごろ心ざし深き者なりければ許さず。使、むなしく帰りぬ。

孫秀、怒りて、趙王に訴(うた)へて、石崇がもとへ、兵(つはもの)を遣はしけり。兵、すでに門のほとりに来たり進むを、石崇、楼の上よりこれを見るに、思ふ方なくて、「なんぢがために、たちまちに命を失なはむことのいたみ、思ふにあらず」と言ふに、緑珠、聞きも果てず、「なんぢが罪を得むこと、われゆゑなり。われ、まづ命を終へむ」と言ひて、泣く泣く楼より落ちて死ににけり。

  若草のつゆの契りの悲しきは緑の玉の落ちにけるかな

翻刻

緑珠墜楼 〃〃ハ石崇カ妓女也艶色美麗/ニシテナサケフカクスヘテ物ノアハレヲ
シレリケリ舞ノ曲ノタヘナルノミニアラスフエヲサヘニフキケル
石崇コレニ心ヲウツシテ年月ヲヘケリ石崇金谷別館ノ
清涼台ニノホリテ清流ヲムスヒテ緑珠トトモニススミケ
リ時ニ孫秀ト云人緑珠ヲイカテエテシカナトヲモヘリ
ケリ孫秀使ヲコセテ石崇ニ緑珠ヲコヒケリ石崇カタヘノ
妓女ヲ数十人ヲシタテテ羅縠ヲキセテスカタヲカサリ蘭麝ヲ/d2-25r
ヲツツミテニホヒヲソヘツツナラヘスヘテエラハシムニ使緑珠ヲ
心サセリ緑珠ハワカトシコロ心サシフカキモノナリケレハユルサス使
ムナシクカヘリヌ孫秀イカリテ趙王ニウタヘテ石崇カモトヘ
ツハモノヲツカハシケリツハモノステニ門ノホトリニキタリススムヲ
石崇楼ノウヱヨリコレヲミルニ思カタナクテ汝カタメニタチマ
チニ命ヲウシナハムコトノイタミ思ニアラスト云ニ緑珠キキモ
ハテスナムチカツミヲエムコトワレユヘナリワレマツ命ヲヲエムト云テ
ナクナク楼ヨリヲチテシニニケリ
        ワカ草ノツユノチキリノカナシキハ
        ミトリノ玉ノヲチニケルカナ/d2-25l
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka11-17.txt · 最終更新: 2018/02/19 23:10 by Satoshi Nakagawa
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