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蒙求和歌

第10第14話(144) 叔敖陰徳

校訂本文

叔敖陰徳

叔敖は楚の令尹なり。桟車牝馬に乗り、冬は羊裘を着、夏は葛衣を着て、ことにふれて倹約を好みし人なり。

いとけなかりし時、遊びに出でて、両頭の蛇(くちなは)を見て、殺して、深く埋(うづ)みてけり。帰りて、母に向ひて泣き居たるを、母、驚き問ふに、「両頭の蛇を見つ。これを見る者は、すなはち死ぬといふことを聞けり」と言ひけり。

「さて、その蛇をば、いかがしつる」と問へば、「後の人の見て、死なむことを惜しみて、殺して、深く埋みぬ」と言ひけり。母いはく、「なんぢ、さらに死ぬべからず。後の人の 見て死なむことを惜しみて、深く埋みつれば、すでに陰徳あり。それ、陰徳あれば、必ず陽報あり。徳は不祥に勝ち、仁は百禍1)を除く。天は高きに居て、卑(ひき)き聞くと言へればなり。

その後、叔敖、楚の令尹となりぬ。

  心ありて降り来る雪をうづまずは野辺のおどろきあやぶまれまし

翻刻

叔敖(カウ)陰徳 〃〃ハ楚ノ令尹ナリ乗桟車牝馬ニ冬ハ/羊裘ヲキ夏ハ葛衣ヲキテ事ニフレテ/d2-16r
倹約ヲコノミシ人也イトケナカリシトキアソヒニイテテ両頭ノ
クチナハヲミテコロシテフカクウツミテケリカヘリテ母ニムカヒテ
ナキヰタルヲ母ヲトロキトフニ両頭ノクチナハヲミツコレヲミルモ
ノハスナハチシヌト云コトヲキケリトイヒケリサテソノクチナハ
ヲハイカカシツルトトヘハ後ノ人ノミテシナムコトヲヲシミテコロシテ
フカクウツミヌト云ケリ母イハクナムチサラニシヌヘカラスノチノ人ノ
ミテシナムコトヲヲシミテフカクウツミツレハステニ陰徳アリソレ陰徳
アレハカナラス陽報アリ徳ハ不祥ニ勝仁ハ百福ヲノソク天ハ
タカキニヰテ卑(ヒキキヲ)キクトイヱレハナリソノノチ叔敖楚ノ令尹トナリヌ
  心アリテフリクルユキヲウツマスハノヘノヲトロキアヤフマレマシ/d2-16l
1)
「百禍」は底本「百福」。書陵部本により訂正。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka10-14.txt · 最終更新: 2018/02/07 21:21 by Satoshi Nakagawa
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