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蒙求和歌

第9第10話(130) 子路負米

校訂本文

子路負米

子路といふ人、家貧しくして、父母を養ふ志浅からず。みづから米を負ひて、百里の道を行き通ふ。わが身は藜1)(あかざ)・藿(まめがら)なとを食ひて、親の食ひ物の良からむ2)をのみ思ひけり。

親失せて後、楚国に行きて、官を賜はり、職を重ねて、家富み、財(たから)豊かになりぬ。かくても、親に見えぬことをのみ、寝ても思ひ、覚めても憂へけり。

「衣(ころも)の袖の錦繍も、親なければ、誰(たれ)がためにか宝(たから)とせむ」と憂へ、百乗の車の飾りもかひなく、千鍾(しよう)の粟の貯へもよしなく思えつつ、貧しくて、親を養ひし時のみ恋しく思えけるままに、昔のあやしかりし姿にて、あふひのみを食ひて過ぐしける。

論語にいはく、六斗四升を釜と曰ひ、十六斗を庾と為す。十六斛を秉(へい)と曰ひ、五秉合八十斛と為す。
またいはく、釜十、すなはち鍾なり。一石、四斗なり。十六斛を秉とす。

  たらちねの見ぬは心の闇なれば夜の錦に濡るる袖かな

翻刻

子路負米   子路ト云人家マツシクシテ父母ヲヤシ/ナフ志アサカラスミツカラ米ヲヲヒテ
百里ノミチヲユキカヨフワカミハ藜(アカサ)藿(マメカラ)ナトヲクヒテヲヤノ
クヒモノノヨ□□ムヲノミ思ヒケリヲヤウセテ後楚国ニユキ
テ官ヲタマハリ職ヲカサネテイヱトミタカラユタカニナリヌ
カクテモヲヤニミエヌコトヲノミネテモ思ヒサメテモウレヱ
ケリ衣モノソテノ錦繍モヲヤナケレハタレカタメニカタ
カラトセムトウレヘ百乗ノ車ノカサリモカヒナク千鍾(シヨウノ)
アハノタクハヘモヨシナクヲホヘツツマツシクテヲヤヲヤシナ
ヒシ時ノミコヒシクヲホヘケルママニ昔ノアヤシカリシスカタニテ/d2-10l
アフヒノミヲクヒテスクシケル
    論語ニ云六斗四舛ヲ曰釜ト十六斗ヲ為庾ント十六
    斛ヲ曰秉(ヘイト)五秉合為八十斛
秉  又云釜十則鍾ナリ一石四斗ナリ十六斛ヲ秉トス
    タラチネノミヌハ心ノヤミナレハ
    ヨルノニシキニヌルルソテカナ/d2-11r
1)
底本異体字 草冠に初
2)
「良からむ」は底本「よ□□む」で二字虫損。書陵部本により補う。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka09-10.txt · 最終更新: 2018/01/26 13:16 by Satoshi Nakagawa
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