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蒙求和歌

第9第5話(125) 宋弘不諧

校訂本文

宋弘不諧1)

後漢の宋弘、明帝の時、侍中として仕へけり。宋弘、容姿華麗にして、情け深かりき。

時に、帝のをば、湖陽公主、宋弘が、もとより妻(め)あることを知りて、色には出でねども、「いかでも」と思ふ心深かりけり。

いかなるひまかありけむ、屏風の中に近付き寄りて、語らひていはく、「富みては交りを易(か)へ、貴みて妻を易ふ」と聞こえけり。宋弘、答へていはく、「臣聞く、糟糠の妻をば堂より下さず、貧賤の友をは忘るべからず」。かく答へて去りぬ。

公主、宋弘を思ふ心、ますます深くなりて、とがむるばかりになりにければ、帝、聞き給ひき。勧め給へども、昔の情けをあらためがたく思ひ取りて、つひにうけ申さず。

  ふりにける契りをいかが忘れ草あだなる露にむすぼほるべき2)

翻刻

宋弘不階   後漢ノ宋弘明帝ノ時侍中トシテ/ツカヘケリ宋弘容姿花麗ニシテナ
サケ深(フカ)カリキ時ニ帝ノヲハ湖陽公主宋弘カモトヨリメア
ル事ヲシリテ色ニハ出ネトモイカテモト思フ心フカカリケリ
イカナルヒマカアリケム屏風ノ中ニチカツキヨリテカタラヒ
テ云ク冨テハ易交リヲ貴ミテ易フ妻ヲトキコヱケリ宋弘コタヘ/d2-8r
テ云ク臣聞糟糠之妻ヲハ不下堂ヨリ貧賤ノ友ヲハ不可忘
カクコタヘテサリヌ公主宋弘ヲ思フ心マスマスフカクナリテトカムルハ
カリニナリニケレハ帝キキ給ヒキススメ給ヘトモ昔ノナサケヲ
アラタメカタク思ヒトリテツヒニウケ申サス
    フリニケルチキリヲイカカワスレクサ
    アタナルツユニムスホヲレヘキ/d2-8l
1)
底本及び書陵部本「宋弘不階」。典拠により訂正。
2)
「むすぼほるべき」は底本「ムスホヲレヘキ」。文意により「レ」を「ル」の誤写とみて訂正。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka09-05.txt · 最終更新: 2018/01/22 23:58 by Satoshi Nakagawa
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