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蒙求和歌

第3第17話(52) 軻親断機 虫

校訂本文

軻親断機 虫

軻親、孟母なり。孟軻が母なり。孟軻をば鄒の孟子1)と言へり。

孟母が家の傍らに、古き墓あり。孟軻、いとけなき折、戯(たはぶ)れて墓を築(つ)きけり。母、「わが子に悪しきことを習はさじ」とて、屋をこぼちて、他(ほか)に移りぬ。その傍らに市あり。孟軻、物売り買ふことを知れり。母、「わが子に良からぬこと習はさじ」と思ひて、また、屋をこぼちて、他へ移りぬ。また、その傍らに学館あり。孟軻、文字を学ぶに、うつはものに足れり。この地に、「住処(すみか)とすべし」と定めてけり。

孟軻、もの習ひて、帰り来たれるに、「なんぢ、学ぶる所、至れりや」と問ふに、未(ま)だしきよしを答へけり。母、機(はた)を織りさして、刀を取りて、機を切り捨てけり。

孟軻、驚きて問ふに、「なんぢが学問をすたること、機を捨てたらむごとし」と言ふに、孟軻、ことはりを思ひ知りて、勤学をして、文長じて、後に大儒の名得たり。

  これやこの野辺(のべ)の錦も浅しとて機織る虫のうらみける声

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軻親断機 虫
軻親孟母ナリ孟軻カ母ナリ孟軻ヲハ鄒孟于ト云リ孟母カ
家ノカタハラニフルキハカアリ孟軻イトケナキヲリタハフレテ
ハカヲツキケリ母我カ子ニアシキ事ヲナラハサシトテヤヲコホ
チテホカニウツリヌソノカタハラニ市有リ孟軻モノウリ
カウコトヲシレリ母我カコニヨカラヌコトナラハサシト思テ
又ヤヲコホチテホカヘウツリヌ又ソノカタハラニ学館アリ孟
軻文字ヲマナフニウツワモノニタレリコノ地ニスミカトスヘシ
トサタメテケリ孟軻モノナラヒテカヘリキタレルニナム
チマナフルトコロイタレリヤト問ニマタシキヨシヲコタヘケリ
母ハタヲヲリサシテカタナヲトリテハタヲキリステケリ
孟軻ヲトロキテ問ニ汝チカ学門ヲスタル事ハタヲステ
タラムコトシト云ニ孟軻コトハリヲオモヒシリテ勤学ヲ
シテ文長シテ後ニ大儒ノ名得タリ/d1-28r
  コレヤコノノヘノニシキモアサシトテハタヲルムシノウラミケルコヱ/d1-28l
1)
底本「鄒孟于」。文脈により訂正
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka03-17.txt · 最終更新: 2017/11/07 19:28 by Satoshi Nakagawa
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