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蒙求和歌

第3第5話(40) 廉頗負荊 荻

校訂本文

廉頗負荊 荻

趙の将軍廉頗、藺相如賤しき位にして、上(かみ)にあることを憤りけり。藺相如、このことを聞きて、廉頗が出づる時は、病(やまひ)と言ひなして出でざりけり。

後に道に出でて、行き会ひにけり。藺相如、車を退けて隠れ去りぬ。舎人(しやじん)がいはく、「廉頗、悪言をいたせり。庸人、なほ恥づべし。いはんや、将軍として恐るること、深かるべきにあらざるをや」と告げ知らせけり。

藺相如がいはく、「秦王の威ありしをだにも行きて、なほひそめきき、廉頗を恐れ怖づべきにあらず。秦の、わが国趙を攻めぬことは、われと廉頗と、二つの将軍あるを恐るるゆゑなり。たとへば、二つの虎、戦ひ合はば、その勢ひともに生くべからず。われ、国のために身を捨てむことを先として、私(わたくし)のあたを報ゆることを後(のち)にす」と答へけり。

廉頗、このことをもれ聞きて、うち悲しみて、荊を負ひ、相如が門に至りて、罪を謝しけり。いはく、「小人賤しくして、君子を軽くし、あなづらしめけることを悔ゆなり」と言ひけり。

  ともすればそよぎ時雨の音かへて軒に折れふす荻の下風(したかぜ)

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廉頗負荊 荻
趙ノ将軍廉頗藺(リム)相(シヤウ)如賤(イヤシキ)位ニシテカミニアルコトヲイキト
ヲリケリ藺相如此事ヲキキテ廉頗カイツル時ハヤマヒトイ
ヒナシテイテサリケリ後ニ道ニイテテユキアヒニケリ
藺相如車ヲシリソケテカクレサリヌ舎(シヤ)人カ云/d1-23r
廉頗悪言ヲイタセリ庸人ナヲハツヘシイハムヤ将軍トシテ
ヲソルルコトフカカルヘキニアラサルヲヤトツケシラセケリ
藺相如カ云秦王ノ威アリシヲタニモユキテナヲヒソメキキ廉
頗ヲヲソレヲツヘキニアラス秦ノワカ国趙ヲセメヌコトハワレ
ト廉頗トフタツノ将軍アルヲヲソルルユエナリタトヘハフ
タツノトラタタカヒアハハソノイキホヒトモニイクヘカラス我
国ノタメニミヲステムコトヲサキトシテワタクシノアタヲムク
ユルコトヲノチニストコタヘケリ廉頗此事ヲモレキキ
テウチカナシミテ負荊相如カ門ニ至テツミヲ謝シケリ
云少人イヤシクシテ君子ヲカルクシアナツラシメケルコトヲ
クユナリト云ヒケリ
  トモスレハソヨキシクレノヲトカヘテノキニヲレフスヲキノシタ風/d1-23l
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka03-05.txt · 最終更新: 2017/10/27 21:42 by Satoshi Nakagawa
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