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蒙求和歌

第1第16話(16) 壺公謫天 菫菜

校訂本文

壺公謫天 菫菜(すみれ)

壺公はその姓・字を知らず。汝南の費長房は市の縁なり。

時に薬を売る人あり。薬を売るに、値(あたひ)を限ることなし。一つの壺を屋の上に置いて、日入りて後に、飛びて壺の中に入る。

人、これを見ることなし。長房のみぞ、楼の上に居て見ける。ただ者にあらずと知りぬ。壺を身にしたがふるゆゑに、壺公1)といふなり。

長房、壺公が居たるあたりを払ひ清めて、餅を勧むること、度(たび)重なりにけり。壺公、長房が情けを思ひ知りぬ。日の入るほどに、長房を呼びて、「わが壺に入らむを見て、われとともに踊り入れ」と教ふ。

長房、共に壺に入りぬ。内に楼閣五色にして、重門閣道あり。左右に侍者数十人。壺公がいはく、「これは仙人なり。天曹の職を司りて、据うる所多し。勤め怠ることあるゆゑに、罪を得て、謫せられて、しばらく人間に来れるなり」と言ひて、「仙術を教えむ」と契れり。

  旅人の宿かる野辺のつぼすみれ思はぬ春の日数をぞつむ

翻刻

壺公謫天 菫菜(スミレ)/d1-12l
壺公ハ其姓字ヲ不知汝南費長房ハ市ノ縁也時ニ薬
リヲウル人有リ薬ヲウルニ直ヒヲカキル事ナシヒトツノツホヲヤノ
ウヱニヲイテ日イリテ後ニトヒテツホノ中ニ入ル人此ヲ見
コトナシ長房ノミソ楼ノ上ニ居テ見ケルタタモノニアラス
ト知ヌツホヲ身ニシタカフル故ニ壺口ト云ナリ長房
壺公カ居タルアタリヲハラヒキヨメテ餅ヲススムルコト
タヒカサナリニケリ壺公長房カナサケヲ思ヒ知ヌ日ノ
入ル程ニ長房ヲヨヒテ我カツホニ入ラムヲ見テ我トトモニヲ
トリイレトヲシフ長房トモニツホニ入ヌ内ニ楼閣五色ニ
シテ重門閣道有左右ニ侍者数十人壺公カ云ク此ハ仙人也
天曹ノ職ヲツカサトリテスフル所ヲホシツトメヲコタル事
アルユエニ罪ヲ得テ謫セラレテシハラク人間ニ来レル也
ト云テ仙術ヲヲシエムトチキレリ
  タヒ人ノヤトカルノヘノツホスミレヲモハヌハルノヒカスヲソツム/d1-13r
1)
底本「壺口」。諸本により訂正。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka01-16.txt · 最終更新: 2017/10/15 15:08 by Satoshi Nakagawa
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