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蒙求和歌

第1第14話(14) 李広成蹊 桃

校訂本文

李広成蹊 桃

李広、隴西成紀の人なり。弓矢の道にかしこかりければ、戦ひの功ここに重りて、将軍にうつされにけり。

大史公1)がいはく、「余、李将軍を見るに、悛悛たること鄙人のごとく、口に道辞することあたはず」と言へり。死ぬ時、天下に知るも知らぬも、これを惜しみて、悲しみを尽せり。世の人の諺(ことわざ)にいはく、「桃李は言はざれど、下に自ら蹊を成す」と言へり。

李将軍、親を虎に食はれて、野辺を行くに、草の中に虎ありと見て、これを射貫きてけり。その矢、羽を飲むと言へり。近く寄りて見れば、虎にはあらずして、大きなる石なりけり。

石を見て後に射るに、その矢、立つことなし。「親を食らひし虎」と思ひて射けるによりて、石を貫けるなり。

  もの言はぬ花も人目をさそひけり道もさりあへずももの下かげ

翻刻

李広成蹊 桃
李広隴西成紀人也弓箭ノ道ニ賢コカリケレハタタカヒ
ノ功ココニ重リテ将軍ニウツサレニケリ大史公カ云余覩ルニ
李将軍ヲ悛々タルコト如鄙人口ニ不能道辞口スルコト云ヘリ
死時天下ニシルモシラヌモ此ヲヲシミテカナシミヲツクセリ世ノ
人ノコトワサニ云ク桃李不言下ニ自成蹊ト云ヘリ李/d1-12r
将軍ヲヤヲ虎ニクハレテ野ヘヲ行ニ草ノ中ニ虎有ト見テ此ヲ
イツラヌキテケリ其矢飲羽云リ近クヨリテ見レハ虎ニハア
ラスシテヲホキナル石ナリケリ石ヲ見テ後ニイルニ其矢タツ
事无シヲヤヲクラヒシ虎ト思テイケルニヨリテ石ヲツラヌケル也
  モノイハヌ花モ人メヲサソヒケリミチモサリアヱスモモノシタカケ/d1-12l
1)
司馬遷
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka01-14.txt · 最終更新: 2017/10/14 18:20 by Satoshi Nakagawa
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