text:kohon:kohon063
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
両方とも前のリビジョン前のリビジョン次のリビジョン | 前のリビジョン | ||
text:kohon:kohon063 [2014/06/15 13:46] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | text:kohon:kohon063 [2016/08/12 00:24] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
---|---|---|---|
行 1: | 行 1: | ||
- | ====== 第63話 | + | 古本説話集 |
+ | ====== 第63話 | ||
**龍樹菩薩先生以隠蓑笠犯后妃事** | **龍樹菩薩先生以隠蓑笠犯后妃事** | ||
- | **竜樹菩薩、先生に隠蓑笠を以て后妃を犯す事** | + | **龍樹菩薩、先生に隠蓑笠を以て后妃を犯す事** |
===== 校訂本文 ===== | ===== 校訂本文 ===== | ||
- | 今は昔、竜樹(りうず)菩薩、ただの人におはしける時、俗三人を語らひ合はせて、隠れ蓑の薬を作る。その薬を作るやうは、宿木を三寸に切りて、陰に三百日干して、それをもちて作る。その法を習ひて作りけるなり。その木を髻(もとどり)にたもちてすれば、隠れ蓑のやうに形を隠すなり。 | + | 今は昔、龍樹菩薩、ただの人におはしける時、俗三人を語らひ合はせて、隠れ蓑の薬を作る。その薬を作るやうは、宿木を三寸に切りて、陰に三百日干して、それをもちて作る。その法を習ひて作りけるなり。その木を髻(もとどり)にたもちてすれば、隠れ蓑のやうに形を隠すなり。 |
- | さて、この三人の俗、心を合はせて、このかたちをかうへにして((底本、意味不明。今昔物語集「此の陰形の薬と頭に差て」。打聞集「かの陰形の薬を首に差て」))、王宮に入りぬ。もろもろの后犯す。后たちは、目に見えぬ物の、忍びて寄り来るよしを御門に申す。 | + | さて、この三人の俗、心を合はせて、このかたちを頭(かうべ)にして(([[text: |
時に御門、賢くおはしける御門にて、「この物は、形を隠してある薬を作りてある物どもなり。すべきやうは、灰を隙なく宮の内に撒きてん。さらば、身は隠す物なりとも、足形付きて、行かん所はしるく現れなむ」とかまへられて、灰を召して隙なく撒かれて、この三人の物どもの宮の内にある折に、この灰を撒きこめつれば、足形の現るるに従ひて、太刀抜きたる物どもを入れて、足形付く所を推し量りに切りければ、二人は切り伏せつ。 | 時に御門、賢くおはしける御門にて、「この物は、形を隠してある薬を作りてある物どもなり。すべきやうは、灰を隙なく宮の内に撒きてん。さらば、身は隠す物なりとも、足形付きて、行かん所はしるく現れなむ」とかまへられて、灰を召して隙なく撒かれて、この三人の物どもの宮の内にある折に、この灰を撒きこめつれば、足形の現るるに従ひて、太刀抜きたる物どもを入れて、足形付く所を推し量りに切りければ、二人は切り伏せつ。 | ||
行 15: | 行 16: | ||
いま一人は、后の御裳(も)の裾をひきかづきて、伏し給ひて、多くの願を立て給ふ。その験(しるし)にやあらん、二人を切り伏せてければ、「二人こそありけれ」とて去りぬ。 | いま一人は、后の御裳(も)の裾をひきかづきて、伏し給ひて、多くの願を立て給ふ。その験(しるし)にやあらん、二人を切り伏せてければ、「二人こそありけれ」とて去りぬ。 | ||
- | その後、人間(ひとま)をはかりて、この竜樹菩薩は、賢く宮の内を逃げ給ひて、法師になり給ひて、かく竜樹菩薩とは崇められ給ふなりけり。されは、もとは俗にてぞ。 | + | その後、人間(ひとま)をはかりて、この龍樹菩薩は、賢く宮の内を逃げ給ひて、法師になり給ひて、かく龍樹菩薩とは崇められ給ふなりけり。されは、もとは俗にてぞ。 |
===== 翻刻 ===== | ===== 翻刻 ===== |
text/kohon/kohon063.txt · 最終更新: 2016/08/12 00:24 by Satoshi Nakagawa