text:kohon:kohon001
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
両方とも前のリビジョン前のリビジョン | 次のリビジョン両方とも次のリビジョン | ||
text:kohon:kohon001 [2016/01/20 13:04] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | text:kohon:kohon001 [2019/03/04 23:04] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
---|---|---|---|
行 12: | 行 12: | ||
斎宮・斎院は仏経忌ませ給ふに、この斎院は仏経をさへあがめ申させ給ひて、朝ごとの御念誦欠かせ給はず。三尺の阿弥陀仏に向かひ参らせさせ給ひて、法華経を明け暮れ読ませ給けりと、人申し伝へたり。賀茂祭の日、「一条の大路に、そこら集まりたる人、さながら共に仏にならん」と誓はせ給ひけるこそ、なほあさましく。 | 斎宮・斎院は仏経忌ませ給ふに、この斎院は仏経をさへあがめ申させ給ひて、朝ごとの御念誦欠かせ給はず。三尺の阿弥陀仏に向かひ参らせさせ給ひて、法華経を明け暮れ読ませ給けりと、人申し伝へたり。賀茂祭の日、「一条の大路に、そこら集まりたる人、さながら共に仏にならん」と誓はせ給ひけるこそ、なほあさましく。 | ||
- | さて、この世の御栄華をととのへさせ給はぬかは。御禊より始め、三日の作法、出車なとのめでたさは、御心ざま、御有さま、大方優にらうらうしくおはしましたるぞかし。宇治殿((藤原頼道))の兵衛佐にて、御禊の御前せさせ給ひけるに、いと幼なくおはしませば、例は本院に帰らせ給ひて、人々に禄など賜はするを、これは河原より出でさせ給ひしかば、思ひかけぬ事にて、さる御心まうけもなかりければ、御前に召し有りて、御対面せさせ給ひて、奉りたりける御小袿をぞかづけ奉らせ給ひける。 | + | さて、この世の御栄華をととのへさせ給はぬかは。御禊より始め、三日の作法、出車なとのめでたさは、御心ざま、御有さま、大方優にらうらうしくおはしましたるぞかし。宇治殿((藤原頼通))の兵衛佐にて、御禊の御前せさせ給ひけるに、いと幼なくおはしませば、例は本院に帰らせ給ひて、人々に禄など賜はするを、これは河原より出でさせ給ひしかば、思ひかけぬ事にて、さる御心まうけもなかりければ、御前に召し有りて、御対面せさせ給ひて、奉りたりける御小袿をぞかづけ奉らせ給ひける。 |
入道殿((藤原道長))、聞かせ給ひて、「いとをかしくもし給へるかな。禄なからんも便なく、取りにやりたらむも程経ぬべければ、とりわき給へる様を見せ給へるなり。えせ物は、え思ひよらじかし」とぞ、殿は申させ給ひける。 | 入道殿((藤原道長))、聞かせ給ひて、「いとをかしくもし給へるかな。禄なからんも便なく、取りにやりたらむも程経ぬべければ、とりわき給へる様を見せ給へるなり。えせ物は、え思ひよらじかし」とぞ、殿は申させ給ひける。 |
text/kohon/kohon001.txt · 最終更新: 2021/10/07 01:54 by Satoshi Nakagawa