text:karakagami:m_karakagami2-02
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text:karakagami:m_karakagami2-02 [2022/11/04 22:28] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:karakagami:m_karakagami2-02 [2022/11/05 18:13] (現在) – Satoshi Nakagawa | ||
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世の中静まりにしかば、馬をば華山の陽に放ち、牛を桃林の墟(きよ)に放たれ、兵具((底本「ツハモノノク」と読み仮名。))どもを解き置かれて、「天下にまた用ひべからず」とぞ示されし。伯夷・叔斉は、諫め申ししことを恥ぢて、周の粟をばはまずして、首陽山に入りて蕨を採りて、つひに餓ゑたり。麋鹿(びろく)の出で来たりける。叔斉はこれを害して食はんとするに、鹿去りぬ。伯夷はこれを憂へて死ぬ。 | 世の中静まりにしかば、馬をば華山の陽に放ち、牛を桃林の墟(きよ)に放たれ、兵具((底本「ツハモノノク」と読み仮名。))どもを解き置かれて、「天下にまた用ひべからず」とぞ示されし。伯夷・叔斉は、諫め申ししことを恥ぢて、周の粟をばはまずして、首陽山に入りて蕨を採りて、つひに餓ゑたり。麋鹿(びろく)の出で来たりける。叔斉はこれを害して食はんとするに、鹿去りぬ。伯夷はこれを憂へて死ぬ。 | ||
- | 太公望の女(むすめ)邑姜(いうきやう)ぞ、后に参り給ひし。〓((底本、判読できない。))にのたまひけるは、「紂は臣億万までありしかども、その心億万なり。予は臣三千なれども、その心一心なり。予に乱臣十人あり。心を同じ、徳に同ず。周公旦・公奭(こうせき)・太公望・畢公(ひつこう)・栄公(えいこう)・大顛(だいてん)・閎夭(くわうよう)・散宜生(さんぎせい)・南宮括(なんきうくわつ)・文王母、十人はこれなり。乱は理なるゆゑに乱臣((底本、「是ハヲサマルト云心也」と注。))とは称す。「心を一つにしては百君にも事(つか)へつべし。心を百にしては一君にも事(つか)ふべからず」といふこと、これよりおこれり。 | + | 太公望の女(むすめ)邑姜(いうきやう)ぞ、后に参り給ひし。 |
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+ | 常にのたまひけるは、「紂は臣億万までありしかども、その心億万なり。予は臣三千なれども、その心一心なり。予に乱臣十人あり。心を同じ、徳に同ず。周公旦・公奭(こうせき)・太公望・畢公(ひつこう)・栄公(えいこう)・大顛(だいてん)・閎夭(くわうよう)・散宜生(さんぎせい)・南宮括(なんきうくわつ)・文王母、十人はこれなり。乱は理なるゆゑに乱臣((底本、「是ハヲサマルト云心也」と注。))とは称す。「心を一つにしては百君にも事(つか)へつべし。心を百にしては一君にも事(つか)ふべからず」といふこと、これよりおこれり。 | ||
昔、文王疾(やまひ)し給ふときは、冠(かぶり)・帯を脱(と)かずして養ひ奉り、文王ひとたび飯する時は、ひとたび飯し、再び飯するときは、また再び飯し給ふ。孝行の御心ならびなし。「明王は孝をもて天下を治む」といへり。君も臣も孝を先とすべきなり。 | 昔、文王疾(やまひ)し給ふときは、冠(かぶり)・帯を脱(と)かずして養ひ奉り、文王ひとたび飯する時は、ひとたび飯し、再び飯するときは、また再び飯し給ふ。孝行の御心ならびなし。「明王は孝をもて天下を治む」といへり。君も臣も孝を先とすべきなり。 | ||
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て遂に餓え(ウヱ)たり麋(ビ)鹿のいてきたりける叔斉は是を害し | て遂に餓え(ウヱ)たり麋(ビ)鹿のいてきたりける叔斉は是を害し | ||
て食はんとするに鹿去ぬ伯夷はこれをうれへて死ぬ太公望 | て食はんとするに鹿去ぬ伯夷はこれをうれへて死ぬ太公望 | ||
- | の女邑姜そ后にまゐり給し〓にのたまひけるは紂は臣 | + | の女邑姜そ后にまゐり給し常にのたまひけるは紂は臣 |
億万(オクマン)まてありしかともその心億万なり予(ヨ)は臣三千なれ | 億万(オクマン)まてありしかともその心億万なり予(ヨ)は臣三千なれ | ||
とも其心一心なり予(ワレ)に乱臣十人あり心を同じ徳に同す | とも其心一心なり予(ワレ)に乱臣十人あり心を同じ徳に同す |
text/karakagami/m_karakagami2-02.1667568513.txt.gz · 最終更新: 2022/11/04 22:28 by Satoshi Nakagawa