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text:k_konjaku:k_konjaku9-17 [2017/02/04 16:36] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku9-17 [2017/02/04 16:43] (現在) Satoshi Nakagawa
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 他の人有て、馬一頭を与へたり。此の人、此の馬を得て、年来家に有る間、此の人、寒の時、酒食を以て墓を祭るに、此の馬に乗て墓へ行くに、一の河を渡らむと為るに、馬、敢へて河を渡らず。然れば、乗たる人、馬を打つに、馬の頭・面、打傷られて、血を流す。遂に、墓に至て、馬をば放て、墓を祭る間((底本頭注「間一本時ニ作ル」))に、馬、俄に失ぬ。 他の人有て、馬一頭を与へたり。此の人、此の馬を得て、年来家に有る間、此の人、寒の時、酒食を以て墓を祭るに、此の馬に乗て墓へ行くに、一の河を渡らむと為るに、馬、敢へて河を渡らず。然れば、乗たる人、馬を打つに、馬の頭・面、打傷られて、血を流す。遂に、墓に至て、馬をば放て、墓を祭る間((底本頭注「間一本時ニ作ル」))に、馬、俄に失ぬ。
  
-其の墓祭る人の家に、本より一人の妹居たり。家主の、墓を祭らむが為に出たる間に、妹独り有て、見れば、俄に、我が死し母、入来れり。頭・面より血を流して、形ち・有様、衰へて、泣く事限り無くして、女に告て云く、「我れ、生たりし時、汝が兄の米五升を取て、汝に与たり。此れに依て、罪報を得て、今、馬の身を受て、汝が兄に其の報を償ふ((底本脱文あり以下、鈴鹿本「の事、既に五年也。今日、河を渡らむと為るに、水深くして恐るる間、汝が兄、鞭を」と続く。))以て我れを打つに、頭・面、悉く打傷られて、血を流す。『家に帰らむ』と為るに、強に尚我れを打つ。然れば、我れ、走り来て、汝に告ぐ。我れ、今償ふ事、既に畢なむとす。何ぞ甚だ理に非ずして、苦を受けむ」と、云畢て、走り出ぬ。娘、驚き騒て、此れを尋るに見えず。娘、其の傷られたる形の所を記ぬ。+其の墓祭る人の家に、本より一人の妹居たり。家主の、墓を祭らむが為に出たる間に、妹独り有て、見れば、俄に、我が死し母、入来れり。頭・面より血を流して、形ち・有様、衰へて、泣く事限り無くして、女に告て云く、「我れ、生たりし時、汝が兄の米五升を取て、汝に与たり。此れに依て、罪報を得て、今、馬の身を受て、汝が兄に其の報を償ふ((底本、以下脱文。「鞭を」まで鈴鹿本により補う。))事、既に五年也。今日、河を渡らむと為るに、水深くして恐るる間、汝が兄、鞭を以て我れを打つに、頭・面、悉く打傷られて、血を流す。『家に帰らむ』と為るに、強に尚我れを打つ。然れば、我れ、走り来て、汝に告ぐ。我れ、今償ふ事、既に畢なむとす。何ぞ甚だ理に非ずして、苦を受けむ」と、云畢て、走り出ぬ。娘、驚き騒て、此れを尋るに見えず。娘、其の傷られたる形の所を記ぬ。
  
 而る間、既に、兄、還り来たり。女、先づ兄が乗れる所の馬の頭・面の、傷れ破れて血の流れたる形を見て、其の母の傷られたりつる形に見合はするに、違ふ事無し。 而る間、既に、兄、還り来たり。女、先づ兄が乗れる所の馬の頭・面の、傷れ破れて血の流れたる形を見て、其の母の傷られたりつる形に見合はするに、違ふ事無し。
text/k_konjaku/k_konjaku9-17.txt · 最終更新: 2017/02/04 16:43 by Satoshi Nakagawa